2023-03-23

4年ぶりの学会出席、「雑感」

コロナで学会大会が中止となり、今年3月の大会は、4年ぶりでした。大会「雑感」等を少し記します。

今回4年ぶりに出席したのは、日本応用動物昆虫学会第67回摂南大学大会

大会は、「公開シンポジウム」、「口頭発表」、「ポスター発表」、「小集会」等により構成。

今回の「公開シンポジウム」のタイトルは、『ムーンショットで目指す2050年の昆虫利用と害虫防除』。

概要は、「内閣府ムーンショット目標5、「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」を達成するために、8つの研究開発プロジェクトが進められている」。

「本シンポジウムでは、その中でも昆虫に深い関わりがある2つのプロジェクトについて、その研究内容を紹介するとともに、未来の持続的な食料生産・消費システムについて考える」。

「内閣府ムーンショット目標」、知りませんでした。

4年ぶりの学会、最新の研究成果を知り、刺激と学びになりました。

ヒアリの侵入についての講演を聴きました。『特定外来アリ類の国内侵入・定着の現状と対策―ヒアリとアルゼンチンヒアリ』。

コロナの拡大で、ヒアリを忘れていましたが、2017年兵庫県で侵入が確認されて以来、2022年12月までに18都道府県92件の侵入事例が報告。

2022年に外来生物法が改定され「要緊急対処特定外来生物」が設けられ、2023年にヒアリが指定されたとのこと。しかし、国内分布は拡大の一途。国内侵入と定着及びその防除方法等が紹介。

改めてヒアリの侵入・定着の現状を知り、その分布拡大の実態に驚くと共に学びになりました。

また、『簡易人工吸血法によるヒトスジシマカの大量飼育の検討について』との発表も興味深く聴きました。

私は、約35年前、幼虫の蚊が他種の蚊の幼虫を捕食するトワダオオカという蚊を扱った研究にも従事していました。

この捕食性オオカを室内で累代飼育するには餌となる蚊の幼虫が必要です。餌の蚊としてヒトスジシマカを飼育。この幼虫は人工飼料で飼育可能ですが、成虫は吸血し、吸血源が必要です。

吸血源としてハツカネズミを金属製の網に入れ、それをヒトスジシマカのケージに入れ吸血です。

ネズミに黒山のように蚊がたかって吸血。とても気の毒に思いましたが、当時代替案はなし。

今回の発表で「動物福祉の観点から、動物実験の適正化にかかる法整備が世界各国で進められている。その中で、吸血性昆虫の累代飼育についても、生きた動物を吸血源としない動物愛護管理に配慮がなされた飼育系の確立が求められている」。

「そこで、簡易的な人工吸血法として、吸血源に「ウマ脱繊維血液」を湯せんにより加熱する方式で、ごく一般的な吸血性昆虫であるヒトスジシマカの大量飼育への応用を試みた研究成果」。

講演を聴きました。ウマの血液で十分にシマ蚊は吸血し産卵して、次世代を残します。ハツカネズミに気の毒な思いをさせなくてすみます。

この講演は農薬会社の研究員でした。農薬会社は、如何に害虫を防除するのかが重要な研究課題と思っていましたが、時代の移り変わりを感じました。この講演も勉強になりました。

4年ぶりの学会、学びが多く刺激的でした。講演者に感謝です。

『知識から知恵へ』(平澤 興 一日一言)

「知識が知恵に成長するには、それだけの人生体験と謙虚さがいる」。

「どんなに学問をしても、それが鼻につくような薄っぺらなものではだめである。望ましいのはエスカレーター式上昇の単調な人生ではなく、にが味もある実もある人生であろう」。

『知識から知恵へ』、心に留めたいと思います。