大学生活では色々な学びがあります。その中で重要な学びの一つは、研究室の専門ゼミ。本日は、大学でのゼミについて少し紹介します。
私が大学院生の時は、教員4名を含め、学部及び大学院生等、総勢30名近いメンバーでの研究室ゼミ。毎回、3名が論文紹介。
この研究室ゼミ、多面的に学びました。あるテーマに関して5~10編の論文を読んで総説する先輩や、200頁の英語の専門書を手に持ち、ポイントを板書しながら講義した修士の後輩もいました。多くの猛者(もさ)と遭遇。
紹介論文の質により紹介者のゼミへの意気込みや研究者としての資質も学習。私が修士1年の時には、先輩が紹介するゼミの内容に全くついて行けず、みんな凄いなと痛感。
私は、生態学の主要課題の解明を試みた論文を紹介し、研究室のメンバーが関心を持つ内容の論文を選ぶよう心がけました。
論文紹介及び質疑応答を含めて1人1時間弱の持ち時間、とても鍛えられました。理解力が遅い私の頭は考えるのに時間がかかり、厳しい指導教員から「おまえ、良く理解してないな」と言われたことも数回。
そのような状況は、今でも鮮明に記憶。研究室で共に学んだ先輩や後輩は、在学中に複数論文を国際誌に公表し、大学院を修了すると大学の教員や国の試験場で活躍。研究室の研究レベルの高さ重要に思います。
昨年4月に放送大学山形学習センター(山形SC)に赴任し、色々と考える事がありました。その一つは、ゼミがないこと。
早速、6名の客員教員にお願いし、私も含め7名で昨年10月からゼミ、「学びのサロン」を開始。
これは通学制大学の「ゼミ」とは異なり、「サロン」の味が出る楽しい多面的な学び。
私が所長に就任以来「結縁のセンター」、「多文化交流のセンター」、「人間学の学びのセンター」の3つの目標を掲げ山形SCの運営を行っています。
今年4月からも「結縁のセンター」の活動の一つとして「地域の文化や高等教育の中心として多彩な皆さんが集い学ぶ「学びのサロン」」のさらなる発展に挑戦中です。
先週末、私のサロン第6回「ジミな昆虫の生き方を通じ、研究の面白さを学ぶ」を開催。今回は、第3章の1、龍谷大学の准教授による「敵の敵は友?寄生蜂と植物の関係:化学物質を介した相互作用」を担当者が紹介。
キャベツとそれを餌とする害虫のコナガ、さらにコナガに寄生して捕食する天敵のサムライコバチの「三者系」の研究。
この「三者系」の研究概要は、キャベツをコナガ幼虫が摂食すると、そこからの匂い物質がコナガの天敵のコマユバチを誘引し、幼虫はコマユバチに寄生され、その後、捕食される。天敵による害虫の生物的防除の一つ。
しかし、コナガ幼虫とモンシロチョウ幼虫が同一のキャベツ上で摂食し、2種からの匂い物質が放出されると、コナガの天敵、コマユバチは誘引されない。「複雑な関係」です。
今回は、私を含め7名の参加者。50歳代から70歳代の人生経験の豊富な方々。「サロン」での質問や意見の一部を紹介します。
「野外でキャベツとその害虫は、見かけるがこのような現象が起こっているのはとても驚きだ。本当にこのような事が起こっているのだろうか」。
「キャベツは、コナガ幼虫が摂食。そして、その天敵のコマユバチが誘引される。さらにはモンシロチョウ幼虫も摂食するが、キャベツの最も良い戦略は何なんだろう」。
「コナガ幼虫の摂食、機械的なキャベツの損傷、モンシロ幼虫の摂食でキャベツから匂い物質が出る。この匂い物質の種類は同じだが、成分のブレンド比の相違でコマユバチの誘因が決定。ブレンド比とは何か」。
「コナガは、キャベツのどの部位から摂食を始めるのか。また、キャベツは日本の在来種ではないと思われるが、何処からいつ頃、日本に入ったのか」。
「サロン」に相応しく、紹介論文の主題とは少し異なる質問や意見も出て、「サロン」が盛り上がり、楽しいひと時でした。皆で楽しむ学びが重要に思いました。「サロン」と昔の大学院研究室ゼミの雰囲気も少し紹介。参加者の皆さんに感謝です。
『三学戒』(安岡正篤 一日一言)
「少(わか)くして学べば、壮にして為すあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば、死して朽ちず」。
「若い者の怠けて勉学せぬ者を見る程不快なものはない。ろくな者にならぬことは言うまでもないが、まあまあよほどのろくでなしでなければ、それ相応の志くらいはあるものである」。
「壮年になると、もう学ばぬ、学ぼうとせぬ者が随分多い。生活に逐(お)われてだんだん志まで失ってしまうのである。そうすると案外老衰が早く来る。いわゆる若朽である」。
「能(よ)く学ぶ人は老来ますます妙である。ただし学は心性の学を肝腎とする。雑学では駄目である」。
「細井平洲も敬重した川越在の郷長老、奥貫友山の歌に「道を聞く夕に死すも可なりとの言葉にすがる老の日暮し』」と。
「心性の学」の学びの習慣、重要に思います。『三学戒』、心に銘じたい箴言です。