2023-09-29

令和5年度第1学期、山形SC学位授与式

放送大学は、2学期制で9月下旬と3月下旬に学位授与式があります。我が山形学習センター(山形SC)も9月24日に学位授与式を行いました。本日は、一部再掲も含め少し学位授与式等を紹介します。

令和5年度第1学期、山形SC学位授与者は、13名でした。学位授与式の参加者は、3名。卒業生13名のうち2名は3コースを修了された「生涯学習奨励賞受賞者」。

毎学期1科目ずつ履修している私、それでも単位認定試験は大変。3コースを修了された「生涯学習奨励賞受賞者」の皆さんの凄さを感じ、頭が下がります。

式辞として三つのことをお話しました。その一部を紹介します。

まず、「卒業は、新たな挑戦に向けての出発である。次に、二度ない人生で教養を身に着ける重要性。最後に、生涯、学び続ける習慣の必要性です」。

「まず、卒業は、新たな挑戦への出発である、についてご紹介します。米国では、卒業のことを、コメンスメントと言います。これは「出発」を意味します。私も卒業は、新たな挑戦への出発に思います」。

「現代経営学の開祖で未来学者とも呼ばれたピーター・ドラッガーは、「21世紀に重要視される唯一の能力は、新しいことを学ぶ能力である。それ以外は、全て時間とともにすたれていく」と述べています」。

「言い換えると「これからの時代、新たな事への挑戦が人生を分ける」とも言えます。本質を突いた箴言に思います」。

「私事で恐縮ですが、我が人生を振り返ると、大学卒業は、新たな人生への挑戦、出発でした。それは、大学院での研究生活の始まりです」。

「皆さんがご卒業を一つの節目とし、放送大学で培った幅広い教養を元に新たに挑戦されることを心から期待します。人生二度なしです」。

「二つ目は、「二度ない人生で教養を身に着ける重要性」をお話します。ご存じのように放送大学は、教養学部一学部の大学です」。

「他の大学と異なる点は、卒業までに多面的な教養を学び、それを身につけ卒業することです。これから人生百年時代に向かい、教養はとても重要で、それは、二度ない人生を豊かにします」。

「お茶の水女子大名誉教授で数学者の藤原正彦さんは、『国家と教養』との著書で「教養」とは、「直感力」と「大局観」を与える力だと述べています。私もそう思います」。

「卒業される皆さんは、他大学にない、多様で深い教養を身につけ放送大学を卒業されることに、誇りと自信を持って頂ければ嬉しく思います」。

「東洋哲学の泰斗、安岡正篤先生は、学問し、教養を身に着ける意義を中国の古典『荀子』から紹介されています」。

「夫れ学は通の為に非ざるなり。窮して苦しまず、憂えて心衰えず、禍福終始を知って惑わざるが為なり」。

「学問をするのは、どんな心配ごとがあってもへこたれず、何が禍いで何が幸福かを知り、人生の複雑な問題に直面しても、惑わないためである」。

「学問し教養を身につけることは「知識を習得する」だけでなく、「人物を作る」ことであるとの教えです。学問をし、教養を身につけて、人物を作る、重要に思います」。 

「最後に、「生涯、学び続ける習慣の必要性」をご紹介します。幕末の儒学者、昌平黌の総長、佐藤一斎先生の著書に『言志四録』があります。これは、西郷隆盛先生の座右の書です」。

「その中に、「三学戒」という箴言があります。「二度ない人生には、生涯学びの習慣を持つことが、必要である」と言うのが核心です。私もそう思います。ご紹介します」。

「少(わか)くにして学べば、壮にしてなすあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」との箴言です」。

「すでに皆さんは、学びの習慣を持っておられます。是非、継続して下さい」。

学位授与式は30分と短時間でしたが、佳い顔の皆さんに出会え、幸せな気分になりました。皆さんに感謝です。

『失敗にくじけるな』(平澤 興 一日一言)

「どの方面を問わず、偉大な仕事は、たとえば表面に出る成功の何倍も何十倍もの失敗という山脈の中にそびえる一つの峰である」。

「われわれにとって恐ろしいのは失敗そのものではなく、その失敗によってくじけることである」。

「伸びる人にとって失敗は不幸どころか、むしろ幸福への再出発なのである」。

『失敗にくじけるな』、重要な教えに思います。


2023-09-27

ヨトウムシの大発生に「相変異」を思い出す

先日、忠犬クニオと朝の散歩中、路上に多くのヨトウムシ幼虫が歩行しているのを発見。50cm四方に4から5匹。そして、いずれの幼虫も黒い体色。

昨年の同時期も路上で多くのヨトウを発見。本日は、一部再掲も含め、「昆虫の大発生と相変異」について少し記します。


ヨトウムシは、我が家のお墓に植えた草にもたくさん集合し、15分で100匹以上の幼虫を捕獲。幼虫、たくさんいます。


「ヨトウムシ」は、「夜盗虫」とも書き、幼虫は夜出現してナス等の野菜を食害。それが朝、たくさんの幼虫が歩行。「大発生の兆候か」と思いました。

昆虫の大発生で最もよく知られているのは、アフリカで大発生するサバクトビバッタです。

このサバクトビバッタやヨトウムシの仲間は、大発生すると体色や行動、生態等が異なる「相変異」と呼ばれる現象が生じます。

「相変異」の定義は、「同一種の個体の形態・色彩・生理・行動等の諸特徴にわたる著しい変化が、個体群密度に応じて引き起こされる現象」。

この「相変異」は、個体数が少ないときは定住生活に適した「孤独相」、個体数が多くなったときは移住に適した「群生相」。そして、その間の「転移相」の3つの相に分けられます。

孤独相と群生相は形態や体色が異なるだけでなく、行動や繁殖習性にも顕著な違いがあります。

バッタの群生相では、集合性があり、幼虫は行列をつくって行進するマーチング行動を行い、成虫は群れをなして飛翔。また孤独相が小卵多産であるに対して群生相は大卵少産。

日本でも1986年に鹿児島の南にある馬毛島でトノサマバッタが大発生したことがあります。この大発生は、バッタが糸状菌(カビの一種)に罹患して終息。

路上のヨトウムシから「昆虫の大発生と相変異」を思い出しました。ヨトウムシが大発生しないことを祈ります。

『元気』(安岡正篤 一日一言)

「われわれは「気」を養うということが、一番根本の大事だ。いわば生のエネルギーを養うということ、いい換えれば「元気」ということが一番である」。

「元気がないというのは問題にならぬ。しょぼしょぼして、よたよたして、一向に反応がないなんていうのは、論ずる価値がない」。

「とかく人間は有形無形を論ぜず、元気というものがなければならない」。

「元気というものは、つまり生気である。生のエネルギー、生々しておるということである」。

『元気』、重要です。元気の源の一つは、心身共に健康であることに思います。

2023-09-25

彼岸の中日、秋分の日のお墓参り

松ヶ岡に移住して15年目の昨年末、松ヶ岡共同墓地我が家の墓『大和心』を作り、今年3月に義父が他界。今年初めて家族で彼岸のお墓参り。本日は、彼岸等についてネットで調べましたので少し紹介します。


お彼岸は、主に「お墓参りやお供えを通してご先祖様を供養する期間」として考えられている。お彼岸という言葉の語源は、サンスクリット語の「paramita(パーラミタ)」で、日本語では「波羅蜜多(はらみた)」。

日本の仏教では、「此岸(しがん)」と「彼岸(ひがん)」という概念がある。此岸は、こちら岸。欲や煩悩にまみれた世界(この世)。彼岸は、向こう岸。仏の住むお浄土の世界(悟りの世界、あの世)。

この此岸と彼岸の間に流れる川のことを「三途の川」と呼ぶ。

「波羅蜜多(はらみた)」の漢訳は「至彼岸(とうひがん)=彼岸に至る」。「彼岸」という言葉は「悟りの世界(お浄土の世界)へと辿り着く」という意味。

「お彼岸」という行事は、日本の古来からある「日願(ひがん)」信仰と、仏教伝来後に生まれた「彼岸」という考えが結びついて生まれた。

「日願」信仰は、古来より農作が盛んであった日本では、作物を育てる太陽と私達を守る祖先神への感謝を基本とした太陽信仰が定着し、この信仰は「日願」とも呼ばれる。

仏教伝来後の日本では、下記2つの理由から、「お彼岸の時期に仏教修行を行うことで、悟りの境地である浄土の世界(=彼岸)に至ることができる」という思想が生まれた。

西方の遥か彼方に浄土の世界(彼岸)があるとする「西方浄土」の考えに基づき、太陽が真東から出て真西に沈むお彼岸の時期は、浄土への道しるべができる時とされていた。

昼夜がほぼ同じ長さになることから、1年の中でこの世とお浄土との距離が最も近くなり、思いが通じやすくなる時と考えられていた。

上記2つの思想が結びついたことで、最終的には「ご先祖様への供養を行いつつ、仏教修行をすることで自分自身を見つめ直す時期」というお彼岸行事が生まれた。

仏教修行の一つに「六波羅蜜(ろくはらみつ)」があり、これは出家していない者向けに説いた、悟りに至るための修行方法。

「六波羅蜜」の6つの実践:布施は、施しをする。持戒は、規律を守る。忍辱(にんにく)は、よく正しい心をもつ。精進は、目的に向かってたゆまず努力する。禅定は、常に平静な心をもち続ける。智慧は、智慧を磨き、智慧を働かせる。

「六波羅蜜」は仏教修行の基本ともいわれ、出家していない人たちが毎日これらの項目を実践するのは中々難しいのが現状。

だからこそ、「仏教修行を営むのに最適なお彼岸にこそ、みんなで集中して「六波羅蜜」を実践してみよう」という修行の機会がお彼岸。

「六波羅蜜」は全ての存在に感謝する報恩感謝の精神が基本で、お彼岸にお墓参りやお供えをする行為も、「六波羅蜜」の修行の一環。

お彼岸が全部で7日間設けられているのは、中日はご先祖様の供養に徹し、そのほかの前後3日間を使ってこの修行を毎日1つずつ実践するため。

春秋のお彼岸のお墓参りは、「浄土(あの世)との距離が最も近くなり、ご先祖様への想いが通じやすくなる時期である」という考えから、お彼岸時期のお墓参りが定着。

また、「農作業が小休止して生活に余裕がある時期であったことから、元々お彼岸の時期にお墓参りや死者の供養(先祖祭り)を行う慣習が根付いていた」という説もある。

春彼岸には「ぼた餅」、秋彼岸には「おはぎ」を供える風習がある。小豆の赤の邪気を払う効果や、貴重な砂糖を使用したお菓子で、これらをお供えし、ご先祖様への感謝や家族円満を祈った。

知らないことが多く、とても勉強になりました。来年の彼岸には、彼岸の意味等を思い出し、「六波羅蜜」の修行も含め、今年の彼岸とは少し進化した彼岸を過ごしたいと思います。

『四耐四不訣』(安岡正篤 一日一言)

「耐冷 耐苦 耐煩 耐閑 不激 不躁 不競 不随 もって大事を成すべし」。

「冷に耐え:人間は世間の冷たいことに耐えなければならない。苦に耐え:苦しみに耐えなければならない。煩に耐え:わずらわしいことにも耐えなければならない。閑に耐え:ひまに耐えなければならない」。

「激せず:大事をなさんとする者は興奮してはいけない。躁(さわ)がず:ばたばたしない。競わず:つまらぬ人間と競争をしてはいけない。随(したが)わず:人のあとからのろのろついて行くのは最もいけない」。

『四耐四不訣』、いい箴言です。ふっと思い出しました。肝に銘じたいと思います。

2023-09-23

山形SC学生サークル主催、「研修会」

コロナが5類になり山形学習センター(山形SC)の学生サークル主催行事等も活発になりつつあります。

一昨日開催された山形SC「学生サークルゆうがくの会」主催の研修会「最上川の流通・往来及び左沢(あてらざわ)町場の景観を巡る」に参加しました。本日は、左沢巡りを少し紹介します。

当日は、左沢駅12時30分集合。私は、山形駅から初めて乗車する左沢線で左沢に向かいました。現地集合は、19名。男女約半々でご年配が大多数。

まずは、割烹「きくや」で名物の「味祭膳(あじさいぜん)」をいただく。17種類の料理に舌鼓を打ちながら、山菜料理等がメインの地元料理を味わう。とても美味しい料理でした。


お腹が満たされたところで、「日本一公園」に行き、眼下を流れる最上川や左沢の風景を眺め、ボランティアガイドさんから左沢の歴史等を拝聴する。新知見ばかりで知的刺激を受けました。


左沢は、最上川河口の酒田と左沢からさらに上流地域の最終船着き場とのほぼ中間地点。酒田から左沢まではムシロで帆を作った大型の船で最上川を上り、左沢から上流へは、小型の船に代わる。それゆえ左沢では荷物の積み替えが必要で、そのための倉庫も存在。

左沢から最上川を5日程度で下り酒田に到着。一方、酒田から左沢へは、最上川を上るため約50日。

また、「最上川舟歌」は、酒田の船頭と左沢の恋仲の娘との「ラブソング」だと知りました。

「日本一公園」から、左沢駅に下り、駅から約2時間、徒歩での町巡り。ガイドさんから要所要所で説明を受け左沢の名所旧跡を理解。

とても楽しい午後のひと時。かつて研究者の私。何故、楽しいかを少し考ました。まず、世話人の方がとても気を利かして、参加者が気軽に楽しむ雰囲気を作ってくれた。有能で面倒見の良い世話人。感謝です。

参加者が全員山形SC所属の学生さんまたは元学生さんなので、気軽に情報や意見交換ができた。外歩きなので開放感が良い。約2時間5000歩の散策が丁度手頃の距離。雨も上がり猛暑も終わって天気にも恵まれた。

左沢に到着後すぐいただいた郷土料理が美味しく部屋も綺麗で、仲居さんの対応も良かった。等々が思いつく楽しさの一部です。

♪生きるとはまなぶこと まなぶのはたのしみ♪ 

♪生きるとは知ること 知ることはよろこび♪

これは放送大学歌の一節。この歌詞を実感した「研修会」でした。

来年度も企画があれば、参加したいと思います。企画者の皆さん、参加された学生の皆さんに感謝です。有り難うございました。

『老いを忘れる』(安岡正篤 一日一言)

「真の人物は気概があると共に、どこかゆとりがあって、楽しむ所がなければならぬ。それで、初めて老いを忘れることが出来る。また実際にいつまでも老いないで暮らすことができる」。

「気概、ゆとり、楽しむ」。老いを忘れて暮らしています。

2023-09-21

米処の庄内今、おコメの収穫最盛期

米どころ庄内平野の水田では今、稲穂が頭(こうべ)を垂(た)れ、稲刈り真っ最中です。黄金の稲穂、良いですね。瑞穂の国です。本日は、一部再掲も含め、かつての田んぼでの研究等の一部を紹介します。

庄内では、武士の末裔の集落として有名な松ヶ岡に移住して16年が経過。我が家の裏の果樹園と畑で趣味の農業を楽しんでいますが、研究として長年関わったのは、田んぼです。

「頭を垂れる稲穂」を見て、約16年前から10年以上行った「無肥料・無農薬・無除草剤」でおコメを作る自然共生水田での米作りを思い出しています。

我が家から徒歩5分の田んぼを借用し、7年間「無肥料・無農薬・無除草剤」でイネを栽培し、水田の多様な生物の役割を解明する研究を実施。

この自然共生水田の研究は、私の友人が2006年 鶴岡市で「全国トンボサミット」を開催したのがきっかけです。その時の講演者、篤農家の方との貴重な出会いが研究の出発点でした。

この方は、酒田市で30年以上「無肥料・無農薬・無除草剤」でコメ作り。「コメ作りには、雑草や害虫も含めた生き物の多様性と調和が重要で、生き物と生き物のつながりが必要だ」と話される。

篤農家であり生態学者に思います。探究心が旺盛でお会いすると何時も多くの学びがあった凄い人。

その方の田んぼを視察しましたが、ヤゴやタニシも含め多様な水辺の生き物が生息。「多様な生き物の役割や自然の調和機構の解明」がライフワークの私には、大変魅力的な研究対象で、一気にのめり込みました。

早速、学生諸君や友人と協同研究を開始し、その研究は3段階で進みました。

まず、1)自然共生農法と慣行農法が水田生態系に与える影響の解明(2009-2011)。

そして、2)自然共生農法の経過年数が湛水及びイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (2012 – 2014)。

最後が、3)タニシが湛水生物やイネの生育とイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (2013 - 2015)。

タニシは、「田の主(ぬし)」とも言われ、タニシが田んぼに多いとコメが増収したとのこと。

それゆえ、タニシが田んぼのヤゴ等の湛水生物に及ぼす影響やそれとコメ増収との関係を調査。

3番目の研究が、我が家の近くの水田を借用しての実験。3年間の実験の前後を含めて7年間、一反歩の田んぼを3つ使っての調査。

これらの研究は、8名の学生諸君との協同研究で、4編の修士論文と4編の博士論文となりました。

田植えと稲刈り以外の田んぼの仕事、除草、畦の草刈り、朝夕の用水の操作等、田んぼの管理もやりました。色々な発見があり興味深い7年間。田んぼを楽しみ田んぼから多面的に学びました。

農薬等を使う「慣行水田」を無肥料・無農薬・無除草剤の「自然共生水田」に変えると、昆虫やクモ、オタマジャクシ、ハラアカイモリ、シマヘビ、ツバメ、サギ等、生き物の種数が増え、生物多様性が増加。

「慣行水田」では、肥料や農薬等の化学資材の投入で、特定の生物の個体数が増加し、水田の多様性は減少。

一方、「自然共生水田」では、湛水及び地上の生物多様性が増加し、それが生物の調和を保つ機構の一つのようでした。また、タニシは、湛水生物の多様性増加やそれを通じたお米の増収に機能。

今後は、タニシの影響の機構や調和維持機構の解明が宿題です。

「自然共生田んぼ」では、除草剤を使わないので、6月から7月、毎週1回合計8回除草機で除草

また、100mの畦が5本あり、その草刈りが大変だったこと、田んぼの多様な生き物観察の面白さ等々、懐かしく思い出します。

色々と学び考え楽しんだ7年間。学生諸君や共同研究者の皆さんに感謝。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を見て、かつての田んぼの研究を思い出しました。懐かしいです。

『学べば学ぶほど』(平澤 興 一日一言)

「世の中には、説明のできないような不思議がたくさんあります。全てが科学で解明できるなどということは、間の抜けた科学者の言うことであります」。

「真に科学を、学問を研究した人は、分からないことがだんだん増えてくるということをしみじみ思うものです。学問をして賢くなると思うような学問の仕方は、本当の学問の仕方ではありません」。

「学問をすればするほど、一つ分かれば、十位分からんのが出てきますから、他の人よりは深く知っても、自分として主観的には分からんことの方が、だんだん増えてくるのであります」。

「学問をすればするほど、世の中に当たり前なんてことはなくなり、全てが不思議になるのであります」。

確かに研究すればするほど、分からないところが増えてきます。『学べば学ぶほど』、同感です。

2023-09-19

大学の同窓会、山形支部会に出席

2年に一度開催されていた出身大学の同窓会、山形支部総会・懇親会がコロナで中止になり、今年5年ぶりに開催されました。本日は、先日出席した同窓会について少し記します。

今から約30年前に山形大に赴任し、すぐに大学のサークル活動でお世話になったZ先輩から「大学の同窓会山形支部会が2年ごとに開催されるから出席せよ」と教育的指導。「NOと言えない日本人」の私、出席しました。

それからほぼ皆勤で出席。しかし、私は、4年前から第二の人生に入り、来年は「古希」。今回の参加を最後に同窓会「卒業」を予定。「出処進退」、「退」の時期決定は難しい。

同窓会開催1ヶ月前にZ先輩から電話。「私が9月から次期支部長なので、あなたに副支部長をお願いします」との一言。「ガーン」。「NOと言えない日本人」の私、「了解です」と二つ返事。想定外。人生の「マサカ」に遭遇。

Z先輩が、おそらく2期4年の支部長、私も2期4年とすると、80歳近くまで同窓会支部会に出席、ウウウ。想定外。

元研究者の私、同窓会参加者名簿からの「パターン」を抽出。過去10年間、参加者は30名±4。ほぼ30名の常連。山形県職員が大半。女性の参加者は、2~3名。参加者は、ほぼ40歳以上。今年は、28歳の女性が1名参加。

この「パターン」の考察。縦社会の県職員、先輩の「鶴の一声」効果。「一声」で出席か?。40歳以下が、ほぼゼロも時代を反映。若い人は、このような会に参加を希望しない傾向が大だとか。

後期高齢者が1/3、最高齢が83歳、80代が3名。ご年配が元気。元気な人しか参加されないので、ご年配が元気なのも当然かも知れません。

懇親会のメインは、「出席者の近況報告」。全員が年齢順に近況を報告。人生を長く生きると話すことが多いのか、ご年配は話が長い。若い人は短い。色々な方の近況報告を聞きましたが、話の難しさを感じます。

簡潔でインパクトがあり、チョットユーモアを含めてニヤリとさせて終わり、メッセージが心に残る。このような挨拶や近況報告があれば、私は、絶大な拍手をしますが、拍手に該当の報告はなし。

勿論、私もこのような近況報告は出来ませんが、心には留めておきたい話す時のポイントに思います。

私の卒業年度の上下5年以内の先輩や後輩と多面的な意見や情報交換。私の先輩は、全て第二の人生。私が話した諸先輩は皆元気に第二の人生を満喫。

大先輩でお世話になったZさん、県職員を退職し、自宅から車で30分の山間部を開墾して、別荘を建て農業三昧の日々。

今年は猛暑で農作業がはかどらなかったが、これから涼しくなるので農作業を楽しむとか。自ら農産研究所を設立し、その所長。

2期先輩は、県職員を定年退職後、3haの田んぼを管理しながら、農業技術士事務所を設立し、その所長。持続型農業、有機農業、雑草生態管理、営農普及等のコンサルタント。

後輩諸氏も皆元気でイキが良い。良い仕事をしているのだろうと想像します。差しつ差されつで痛飲。

大先輩や元気な後輩諸氏から元気と刺激をもらった2時間。

副支部長の初仕事、懇親会の締めの挨拶と「山形三本締め」。ピシッと宴会を締めました。

2次会の誘いを丁寧にお断りし、お寿司屋さんで独りボーッと「居酒屋放浪」。何も考えずボーッとして、「お造り」をいただき、次のお酒を考える。至福の一時。

2年後が楽しみです。関係各位に感謝。

『縁尋機妙 多逢聖因』(安岡正篤:一日 一言)

『縁尋機妙(えんじんきみょう)』とは、「良い縁がさらに良い縁を尋ねて発展してゆく様は誠に妙(たえ)なるものがある」とのこと。

『多逢聖因(たほうしょういん)』とは、「いい人に交わっていると良い結果に恵まれる」とのこと。

「人間はできるだけいい機会、いい場所、いい人、いい書物に会うことを考えなければならない」。

 「縁」、重要に思います。『縁尋機妙 多逢聖因』、大切にします。 

2023-09-17

本年度第3回、「学びのサロン」

大学では、学生が他の学生や教員とゼミを通じた自主的な学びが可能です。前職、山形大の私の研究室、学生諸君の成長を振り返ると、ゼミを通じての成長が著しい。大学でのゼミ、不可欠に思います。

今年度も5月から山形学習センターの「学びのサロン(ゼミ)」が開始。本日は、第3回目の私の「サロン」を少し紹介します。

今年度の私の「サロン」は、岩波ジュニア新書『日本の農業を考える』(大野和興著)を輪読。今回は、「第3章 グローバル化の時代の農業」。担当者が、簡潔なレジュメで要点を紹介し、多面的な意見交換。

第3章では、本論に入る前に、「グローバリゼーション」の定義と波及効果に言及。

「グローバリゼーション」は、「地球全体を一つの市場にとらえ、国家の枠を超えて商品が自由に行き来し、競争する仕組みをつくり、それを現実化させること」と定義する。

そして、「グローバリゼーション」により、「農業もこの地球規模の大競争に丸ごと投げ出される。世界各地の地域の自然と歴史を背景に代々築きあげられた農業が急速にくずれている」と警鐘を鳴らす。

3章は、6つの見出しで構成。まずは、「1.いま世界の現実は」。「1)市場こそ万能」では、「市場万能主義は貧困の拡大と環境破壊を生じさせた」ことに触れ、「2)拡大する格差」、「3)生命も金儲けの道具」に続く。

次は、「2.GATTからWTOへ」。ここでは、「1)円高ドル安のなかで」、「2)海外移転した食品産業」、「3)GATTのウルグアイ・ラウンド」と続く。そして、GATTの目的は、「関税その他の貿易障害を廃止し、自由貿易を推進することで、各国経済の発展を図るための多国籍条約」であると記す。

続いて、「4)コメ部分自由化を受け入れる」、「5)WTOの発足と民衆の反発」、「6)新ラウンドはじまる」、「7)急展開する自由貿易協定」が紹介される。

さらに、「3.変わる農業政策の枠組み」では、「1)農業の多面的機能」、「2)食料・農業・農村基本法」に触れ、「基本法」は、「自由貿易を最優先、それを阻害する政策は排除、農業政策の再編」だと述べる。

続いて、「3)こわれる農産物価格支持制度」、「4)農地制度も俎上に」、「5)耕作者主義が消えた」に触れる。

そして、「4.コメ政策の転換」では、「1)部分自由化と新食糧法」、「2)キーワードは自己責任」、「3)歯止めなき価格下落」、「4)コメ関税化」と続く。

また、「5.グローバル化の現実―野菜を例に」 では、「1)和食材料から伝統食まで」、「2)主役は日本企業」、「3)中国の農民は」、「4)生産する南と消費する北」が紹介。

最後の「6.だれが世界の農と食を管理しているか」では、「1)総合化し複合化する多国籍アグロビジネス」、「2)食・農・化学の合体」、「3)種子を制するものは」、「4)農民になれなかったジョニー」、「5)小さな農業の滅び」について述べ、第3章は終わる。

今年度は、私を含め6名の参加者。第3章の紹介後、多面的な意見交換。その一部を紹介します。

「米国は、大統領も含め自国の農産物を他国に結局的に売り込んでいるが、日本では、そのような政治家を思いつかない。日本の優れた農産物を世界に売る必要がある」。

「JAに関する書を読んだが、JAは肥料や農薬を売ることが中心で日本の農業や農業従事者のことを考えているようには思えない」。

「「グルーバル化の時代の農業」を読む限り、日本の農業に希望を見つけるのは難しそうだ。しかし、「第5章 もう一つの農業をつくる」では、日本各地の特色ある農家に触れ、もう一つの日本の農業が紹介。楽しみだ」。

「第3章では、日本の農業のグローバル化への流れや現状が簡潔に記され、貴重な学びとなった。歴史的な流れを踏まえながら日本の農業の実態を考える必要もある」。

あっと言う間の90分、参加者の意見から色々と学びました。皆さんに感謝です。

『陶冶(とうや)する』(安岡正篤 一日一言)

「最高の教育を受けた人間も、その後の自己陶冶を缺(か)いては、立派な人間には成り得ない。ごく劣悪な教育も、自己陶冶によっては、なお改善され得るものである。いかにも人間は陶冶次第です」。

「「陶」というのは、焼き物を造る、「冶」というのは、冶金の冶で、金属を精錬することであります」。

土を粘(ね)り、焼いて、陶器を造る。鉄を鍛えて鉄器を造るようなもので、人間もやはり、焼きを入れ、鍛えるということをやらなければ、ものになりません。いくつになってもそうであります」。

『陶冶する』、「いくつになっても焼きを入れ、鍛える」、重要に思います。

2023-09-15

研究の思い出(10):山大(3)、弱者強者の共存

アブラムシ捕食者には、テントウムシだけでなくヒラタアブ等多くの昆虫がいます。これまでの研究では、その捕食者の中でナミテントウが他のテントウムシを捕食すること等を解明しました。

本日は、ナミに捕食される弱者と強者のナミとの共存を中心に、「賢いヒラタアブ」に少し触れ、テントウムシとヒラタアブを含めたアブラムシ捕食者群集の共存の一端について紹介します。

昆虫の雌は、餌の多いところや捕食者のいない場所に産卵すれば、孵化した幼虫の生存率が高くなります。それゆえ、産卵場所の選択は、幼虫の生存に重要です。ヒラタアブは、とても興味深い産卵をします。

アブラムシの雌は、アブラムシの数が増えて寄主植物が枯死する前に、成虫になると翅が生える幼虫を産みます。この幼虫が翅のある有翅成虫となり、悪くなった寄主植物から、良い寄主植物を求めて飛翔。

それゆえ、有翅の集団は、これからアブラムシが減少することを意味します。

「ヒラタアブの雌は、アブラムシが減少する有翅の集団より、増加する無翅の集団への産卵数が多い」との仮説を検証する実験が行われ、この仮説が支持されました。

それゆえ、ヒラタアブの雌は、餌のアブラムシが増加する集団に産卵し、孵化した幼虫は、餌を容易に捕食して、幼虫の生存率が高くなります。

さらに興味深いヒラタアブの産卵様式。アブラムシの中には、ヒラタアブの幼虫等を攻撃する「兵隊アブラムシ」を持つ種がいます。ヒラタアブの雌は、この兵隊アブラムシがいる集団を避けて産卵。

それれゆえ、捕食者との遭遇が少なくなり、幼虫の生存率が高くなると思われます。

このように「賢いヒラタアブ」の雌は、幼虫の生存率が多くなるように産卵しています。

私達の調査地のムクゲには、大型のテントウムシ、ナナやナミ及び中型のヒメ以外に小型のコクロヒメテントウやヒラタアブもいます。

3種テントウムシの種間関係の次は、3人目のテントウムシ研究の修士学生が、大型のナミとナナが小型のコクロとヒラタアブの個体数に及ぼす影響を解明しました。

野外のムクゲに、ナミとナナの卵を取り除いた区、ナミまたはナナの卵を取り除いた区、取り除きのない区の4処理区を作り、ムクゲ上の捕食者の幼虫数を調査。

その結果、ナミとナナを取り除いた区ではそれ以外の区より、コクロやヒラタアブの幼虫数は多く、ナミとナナがこれらの昆虫の産卵や生存に負の影響を与えていることが示唆。

1993年から10年間、毎年、4年生及び修士の学生諸君が、アブラムシ捕食性昆虫の産卵様式や種間相互作用の研究に従事。

その結果、ムクゲには、5種のテントウムシと5種のヒラタアブがいて、その数は比較的多く、さらに数は少ないがクサカゲロウ、ショクガタマバエ、寄生蜂、クモ類等、多種の捕食者等がいることが判明。

特に、これらの捕食者の中でナミは、他種を捕食する最上位捕食者。この強者とそれ以外の弱者が一緒に生活する「共存の秘訣」をテントウムシ研究4人目の修士学生が、2003年から3年間研究。

野外のムクゲからナミの卵を除去する区と除去しない区でのナミも含めた5種のテントウムシと5種のヒラタアブの産卵及び、その後の幼虫の発育と生存を調査。

これらの捕食者の産卵時期とアブラムシ及びナミの4齢幼虫の発生時期の模式図が下図です。

多くのテントウムシとヒラタアブは、アブラムシが豊富でナミの幼虫が小さい時に産卵し発育。それゆえ、これらの幼虫が発育する時には、ナミからの捕食の可能性は少ない。

一方、ヒメヒラタアブとヒメカメノコテントウは産卵が遅い種。この2種は、ナミがいる区よりナミ除去区で個体数または産卵数が多いことから、ナミの幼虫がいると産卵を抑制する可能性もある。

下図は、ナミを中心にした4種のテントウムシと5種のヒラタアブの種間関係を示した

ムクゲでは、テントウムシやヒラタアブを含め多くのアブラムシ捕食者が共存。その中でナミは最上位捕食者。この強者とそれ以外の弱者が一緒に生活する「共存の秘訣」。

それは、弱者は、強者のナミがアブラムシの減少により他種を捕食する前に発育を完了するか、ナミがいる寄主植物を避けて産卵している可能性が考えられました。

このように昆虫の世界でも弱者が強者と共存するには、弱者の「知恵」が活かされているようです。アブラムシとその捕食者群集の研究は、4名の修士学生が中心となって実施した10年間の研究。

これらの研究や多くの卒業研究の学生が興味深い新事実を発見してワクワクした10年間でした。そして、これらの研究は、3年に一度開催される国際シンポジウムで発表。

1999年、カナダのモントリオールで開催された国際シンポでは、私の研究室から6名が出席し6題の発表。楽しい思い出です。関わってくれた多くの学生諸君に感謝です。有り難う。

次回は、大型のナナと小型のコクロとクロヘリ及び共生アリとの4者の相互作用を博士課程で解明した研究を紹介します。

『仕事の三要素』(平澤 興 一日一言)

「情熱と独創と実行がなければ仕事をしているとは言えない」。

「情熱とは、仕事に対する興味と、希望と、喜びをもって、全力でぶつかることである」。

『仕事の三要素』、重要に思います。