2023-10-31

『致知』読書会、「時代を拓く」(1)

放送大学山形学習センターの有志による2ヶ月に一度の月刊誌『致知』を通じた「人間学の学び」。今年度第4回を先日開催しました。今回の教材は、『致知2023年9月号』、 「特集 時代を拓く」。

本日は、この特集号に掲載された致知出版社、藤尾社長のリード文を少し紹介します。

「森信三師の『修身教授録』(第一部・第36講「誠」)にこういう言葉がある」。

「実は真実の道というものは、自分がこれを興そうとか、あるいは「自分がこれを開くんだ」というような考えでは、真に開けるものではないようです。(中略)では真実の道はいかにして興るものでしょうか」。

「それには「自分が道を開くのだ」というような一切の野心やはからいが消え去って、このわが身わが心の一切を、現在自分が当面しているつとめに向かって捧げ切る「誠」によってのみ、開かれるのであります」。

「道は、自分が当面しているつとめに向かって捧げ切る「誠」によってのみ開かれる」、分かったような気にはなりますが、この実行は簡単ではないことを痛感します。

森師の「道を開く」を読み、「動機善なりや、私心なかりしや」を常に自分に問い、京セラやKDDIを創業し、JALを再生された稲盛さんの生き方が浮びました。稲盛さんの生き方を見ると「誠」によってのみ道が開けるのが理解出来ます。

さらに藤尾社長は、「時代を拓くとは自分を拓くこと、自分の運命を拓くことである。一つの時代に対し、自分の運命を拓いていける人にして、初めて時代を拓くことができるのである」と述べる。

含蓄のある教えに思います。

そして、時代を拓くリーダーの6つの条件を示す。「1)時代の流れを読み、方向を示すこと、2)必死で働く―会社、仕事、社員に対する愛情と熱意は誰にも負けない、3)自分を磨き続ける」。

「4)集団を幸福に導く、5)犠牲的精神―自分の都合より組織のことを優先する、6)宇宙の大法を信じ、畏敬し、その法則に則り行動する」。

「この条件を徹底、反復、実行する人のみが天から力を授かり、時代を拓くのである。歴史がそれを実証している」。

なるほどと感じます。「この条件を徹底、反復、実行する人のみが天から力を授かる」。稲盛さんの生き方そのものに思います。

参加者からは、6つの条件を肝に銘じたいとの感想。

読書会の1時間30分があっと言う間に過ぎました。「一人で『致知』を読む時と読書会を通じ有志との意見交換を前提に『致知』を読むのでは、読み込む深さが違う」との意見も出ました。

同感です。参加者の皆さんに感謝です。

『因果の法則』(安岡正篤 一日一言)

「人間には奇跡というものはありません。奇跡などというのは研究不足、勉強不足の者の言葉でありまして、原因・結果というものは常にはっきりしておるのです」。

「悪いことをしますと、いつかは悪い結果があらわれ、善いことをすれば善い結果があらわれる、というのは厳粛な自然の法則であります」。

「したがって人間は因果律というものを大事にしなければなりません」。

『因果の法則』、大事にしたいと思います。


2023-10-29

元指導学生さんとの楽しい会食、昔の思い出

先日、元指導学生夫妻と会食し、30年近く前の我が研究室での楽しい研究室生活に話が盛り上がりました。本日は、その思い出等を少し紹介します。

氏は、私が指導した初めての博士学生。卒論を大変頑張りよい仕事をし、2編の英語論文を公表。

体長2ミリ程度の小さなアブラムシに産卵する超小さな寄生蜂を材料に研究。

会食の時、2000匹のアブラムシを解剖し、その中の寄生蜂の発育段階を調査したと聞きました。2000匹のアブラムシの解剖調査、知りませんでした。凄い。

氏は、博士号取得後、私の知り合いが教授のワシントン州立大で博士研究員(ポスドク)として5年間研究に従事。研究能力が高いので2年目からは、当該教授から生活費や研究費を支給され研究に没頭。

生態学の世界のトップ雑誌に研究が掲載。私との共著英語論文も6編。とても優秀な学生さんでした。鶴岡で開催した国際シンポを取り仕切り、私が公私ともにお世話になった学生さん。

私が、4年前に山形大を定年退官したとき、卒業生が中心になって『自然の調和の解明を夢見て』との冊子を作成。そこに「動物生態学研究室での研究生活回想」として、100名近くの卒業生から20名が抽出され寄稿。

会食した氏も寄稿。転記します。何回読んでも誰のことを記しているのか、不明ですが、標題は『先生のご指導』です。

「先生ほど指導力のある方を、私は知らない。その指導は手取り足取り行われるものでなく、学生にとって適切な目標を設定することで行われる」。

「学生の能力の有無や多寡によらず、毎日ほんの少し背伸びする努力により達成できる、絶妙なレベルを設定される。そのため、学生は大した根性もないのに投げ出したりせず、一つのことをやり通すことが可能となる」。

「そして、目標達成に向けた手段は細かく指示されず、学生の自由な裁量に委ねられている」。

「これは時間と費用がかかるうえに大変リスキーなやり方で、正解を教えた方が効率的だが、学生の発想力と何度も挑戦する根気強さを育成するためにこの方法がとられている」。

「だが、経験の浅い学生は失敗を繰り返すうちに消沈していく。その際は、ご自身の過去のご苦労を笑い交じりに話す指導をされる」。

「商船高専生~学部生~大学院生と様々なエピソードのどれもが大きな困難にあったことをうかがわせるが、それは一方で、人生の辛い出来事も時間が経てば笑って話せることを示唆している」。

「そのため、学生は眼前の失敗に心を折ることなく、将来笑って話せるように再度挑戦する気持ちになることができる」。

「このようなご指導の中では、一貫して“わかりやすさ”を求められている。最も重要なことに出会うまで深く考え、見つかったものを誰にでも理解出来る形で表現する技術を教えられている」。

「これは農学の研究にとどまらず、様々な活動で普遍的な技術であるため、指導された学生はあらゆる進路へ挑戦することが可能となる」。

「最後に、少し背伸びをする目標は常にゴールを意識したものであり、目標の達成がさらに大きな成功に繋がるように見極められている」。

「そのため、過去に何事も成し遂げたことのない学生であっても、背伸びを毎日続けるうちに予想もしていなかった素晴らしい景色を目にすることができる」。

「これらのご指導の効果は絶大で、“昆虫に強い興味のない学生を半年間でテントウムシの飼育に没頭させ”、“be 動詞もろくに知らない英検5級の学生を数年後に米国に送り出し”、“秀でた能力もない普通の人間を大学教員に仕立て上げ”ている」。

「先生ほど私の人生を変えてくださった方を、私は知らない」。

私は、28年間の山形大での研究生活で約100名の学生さんを指導。しかし、氏のように研究の独創性と力強く生きる生命力のある学生はいませんでした。人間力と専門力のある数少ない研究者です。

2005年の国際シンポで欧米の研究者や学生を抑え、ただ独り選出の最優秀講演者賞を受賞。さらに、山形大農学部で初めての日本学術振興会博士取得特別研究員に採用。とても優秀な学生さん、今国立大准教授。

奥さんとは、会食で初めて会いましたが、お似合いのご夫婦。楽しく仲良く二度ない人生を過ごして欲しいと思います。お世話になった氏に感謝です。


『可能性の引き出し方』(平澤 興 一日一言)

「いかように、可能性を引き出すかということについては、これは、本人に、興味を持たせること、面白いと思わせることが第一だろうと思います」。

『可能性の引き出し方』、同感です。学生さんの可能性をどれだけ引き出せたか定かではありません。

2023-10-27

「炎のコバケンさん」と山響定期演奏会

山形交響楽団第312回定期演奏会、指揮は小林研一郎さん。「コバケンさん」は、39年ぶりの山響定期の指揮。本日は、山響定期演奏会の指揮者「コバケンさん」について少し記します(「#山響」)。

定期演奏会のプログラムにある「コバケンさん」のプロフィールより一部抜粋。

小林研一郎は、「炎のコバケン」の愛称で親しまれる日本を代表する指揮者。東京藝術大学作曲科及び指揮科の両科を卒業。1974年第1回ブダペスト国際指揮者コンクール第一位及び特別賞を受賞。

2002年プラハの春音楽祭では東洋人初のオープニング「わが祖国」を指揮して万雷の拍手を浴びた。

これまでにハンガリー国立フィル、チェコ・フィル等々の名立たるオーケストラと共演を重ね、数多くのポジションを歴任。

ハンガリー政府よりハンガリー国大十字功労勲章(同国で最高位)等、国内では旭日中綬章、文化庁長官表彰、恩賜賞・日本芸術院賞等を綬章。

2005年、社会貢献を目的としたオーケストラ「コバケンとその仲間たちオーケストラ」を設立、以来全国にて活動続けている。

「コバケンさん」、まずは、演奏会の前にピアノの弾き語り。想定外でした。素晴らしい。今回の演奏会では、4曲の演奏。最後は、ドボルザーク:交響曲第8番。

「コバケンさん」、激しい動きの指揮ではないが、交響楽団の迫力ある演奏を引き出す。

そして、バイオリンやビオラ、チェロ等の演奏が始まるときに指でその楽団の方を示し、その演奏に対して左手の親指と人差し指で丸を作り「OK」のサイン。

また、演奏が終わると楽団員や聴衆に向かい両手を合わせて感謝を示す。

イタリアでは、演奏が終わると聴衆がスタンディング・オベーション(演奏会等で観客が立ち上がって拍手をすること)をするのを紹介。その後は、演奏が終わると聴衆がスタンディング・オベーション。

さらにアンコールに応えて、今回のメインの演奏曲、ドボルザーク:交響曲第8番の最後の30秒を再演。凄い迫力、感動でした。

アンコールの最後は、「ロシアとウクライナ及び、シリアとハマスの戦争が起こっているので「ダニー・ボーイ」」を演奏するとのこと。しみじみと聴かせてもらいました。

ネット情報では「ダニー・ボーイ」は、「女性の立場で男性に別れを告げる歌として解釈できる内容だが、この歌は男性歌手によっても多く歌われてきた。また両親や祖父母が戦地に赴く息子や孫を送り出すという設定で解釈されることも多い」と紹介。

世界の「コバケンさん」、旺盛なサービス精神(?)も感じました。凄い。

「コバケンさん」の人間力と専門力、さらに魅力を感じた素晴らしい2時間の指揮と演奏。今年83歳。凄い人です。「コバケンさん」と山形交響楽団の皆さんに感謝。有り難う。

『運鈍根』(平澤 興 一日一言)

「世の中に運鈍根などという言葉がある。鈍とは私のいうのろさであり、根とはのろさを知る故に心の底から出る根である」。

「運とは鈍根のような誠実な生き方をする人に与えられる天の恵みということかと思われるが、面白いもので大成した人々には、確かに運鈍根型の人が多い」。

「大成した人々には、確かに運鈍根型の人が多い」、面白いですね。

2023-10-25

白鳥の飛来と鳥海山の初冠雪:北国に冬到来

約10日前の朝、忠犬「クニオ」と松ヶ岡周回1時間の散歩で鳥海山の初冠雪を発見。


しばらく散歩を続けると上空から「アウー、アウー、アウー」との鳴き声。庄内に冬の到来を告げる白鳥の飛来。北国庄内にまもなく冬到来。本日は、一部再掲も含め白鳥の渡り等を少し記します。

白鳥の逆V字編隊飛行をよく見かけます。この編隊飛行を見ると、何時も「先頭のリーダーは、大変だろう」と思い、ネットで逆V字編隊飛行の理由を検索。新発見がありました。

「逆V字型編隊飛行は、省エネ飛行だと考えられる。25羽の渡り鳥の編隊飛行は、単独飛行に比べ、同じエネルギーで70%も飛行距離を伸ばせる。その一つの理由は、前を飛ぶ鳥の気流が、後ろの鳥を助ける」。

「翼から横に流れる風は、上を向く。つまり、横には上昇気流がある。そして、斜め後ろにいることで、後ろ向きの風と上昇気流の恩恵がある。これが、逆V字型編隊の意義」。

「また、鳥の群れはときどき先頭を入れ替える」。

逆V字編隊飛行は、エネルギーロスの軽減。また、先頭のリーダーが、常に群れを先導するのではなく、先頭は、入れ替わるとのこと。なるほど。移動中の死亡もかなりあり、移動は、決死の行動。

逆V字型編隊飛行、それなりの意義があることを知りました。新発見です。

我が家に春飛来するツバメもそうですが、南方や北方から日本に飛来する渡り鳥がいます。庄内に飛来する白鳥は、シベリアからの飛来とのこと。この渡りについても少し調べました。

まず、渡り鳥は、長距離移動して、どのように「渡ってくる場所」を認識し、飛来するのか。

「渡り鳥が、南や北へ向かう時は、太陽や星座の位置及び、地球の磁気を使って方位を知る。鳥は体内に方位磁針を持ち、方角がわかる」。

「そして、ある程度の処まで行くと地形の記憶をたよりに飛び、最後は目視で目的地へ到着。時には、匂いや仲間の鳴き声も手がかりにする」。

なるほどと思います。商船高専は5年半で卒業。そして、最後の1年間は、遠洋航海実習も含め練習船実習。船の位置を推測する天測実習があり六分儀で星座を睨んだことをふと思い出しました。

次に、長距離移動の理由は何か。

「渡り鳥は南北へと移動。例えば、ハクチョウは、春夏は北のシベリアで子育て、秋冬は南で過ごす。渡る理由の1つは、効率よい餌の獲得。北半球では春夏は「北」で、秋冬は「南」で多くの餌を効率よく獲得」。

移動中に死亡する個体もいる。餌の効率よい獲得のために命がけでの渡り、凄いなと思います。

月山道の紅葉が美しい時期です。しかし、アッと言う間に北国に長い冬がやってきます。長い冬を楽しみたいと思います。白鳥の飛来と鳥海山の初冠雪、まもなく冬の到来。四季のある日本、いいです。

『挑戦する』(平澤 興 一日一言)

「自己に与えられた無限の可能性に挑戦することこそ、最大の人間的な生き方であろう」。

ハクチョウがシベリアで繁殖し、新たに産まれたハクチョウは、一大決心の渡り。おそらく命懸けの挑戦でしょう。「無限の可能性への挑戦」、いくつになっても重要に思います。

2023-10-23

菅原兵治記念館『大学』の箴言と土光さん

ここ松ヶ岡には、1945年に安岡正篤先生の一番弟子、菅原兵治先生が創設された東北農家研修所があり、それは、1964年に東北振興研修所と改称。

朝の「忠犬クニオ」との散歩に「東北振興研修所」を通るコースあり。研修所の門の掲示板に『論語』や『大学』及び『言志四録』等から箴言が記されます。

先日、クニオと朝の散歩で、掲示板に『大学』の箴言、「日に新たにして、日々に新たに、また日に新たなり」を読み、土光敏夫さんを思い出す。

土光さんは、色紙を頼まれると、決まって「日新、日日新」の言葉を書く。本日は、一部再掲も含め土光さんについて少します。

下述は、『土光敏夫 信念の言葉』に記された「20. 日に新たに、日々に新たなり」。

「これは湯盤の銘である。一つだけ座右の銘をあげろといわれれば、躊躇なくこの言葉をあげたい。神は万人に公平に一日24時間を与え給うた。毎日の24時間をどう使うか」。

「私は一日の決算はその日のうちにやることを心がけている。今日が眼目であるから、昨日の尾を引いたり、明日へもち越したりしない。昨日を悔やむこともしないし、明日を思い煩うこともしない」。

「このことを積極的にいい表わしたのが「日新」だ。昨日も明日もない、新たに今日という清浄無垢の日を迎える」。

「今日という一日に全力を傾ける。今日一日を有意義に過ごす。これが私にとって、最大最良の健康法になっているかもしれない」。

この土光さんの生き方、簡単なようで簡単ではありません。これは、「最大最良の健康法」です。

この「日新、日々新」の言葉は、いまから3500年前、中国の商時代の湯王が、毎朝顔を洗う盤に彫りつけ自戒したという言葉で、中国の古典『大学』伝二章にある。

土光敏夫さんは、明治29年(1896年)生まれ。社長として石川島重工業を立て直し、その後、1965年東芝の社長に就任。東芝の経営改革も成功。

1974年には第4代経団連会長に就任、78歳。国の行政実態を調査する「第二次臨時行政調査会」(通称:臨調)の会長、85歳。

そして、中曽根首相の強い意向で、「臨時行政改革推進審議会」(通称:行革審)の会長に就任、87歳。

この土光さん、「社会は豊かに、個人は質素に。理想は高く、暮らしは低く」の生活を実践。朝は4時から法華経を唱え、5時から畑作業。その後、出勤。

土光さんの著書や土光さんに関する書籍を読み返すと「信念を持って生きぬかれた土光さんの生き方」の凄さを感じます。学ぶべき点が多々あるのを再認識。凄い人です。土光さんに感謝。


『四耐四不訣』(安岡正篤 一日一言)

「耐冷 耐苦 耐煩 耐閑 不激 不躁 不競 不随 もって大事を成すべし」。

「冷に耐え:人間は世間の冷たいことに耐えなければならない。苦に耐え:苦しみに耐えなければならない。煩に耐え:わずらわしいことにも耐えなければならない。閑に耐え:ひまに耐えなければならない」。

「激せず:大事をなさんとする者は興奮してはいけない。躁(さわ)がず:ばたばたしない。競わず:つまらぬ人間と競争をしてはいけない。随(したが)わず:人のあとからのろのろついて行くのは最もいけない」。

『四耐四不訣』、いい箴言です。ふっと思い出しました。肝に銘じたいと思います。 

2023-10-21

山形SC同窓会誌『ゆうがく』巻頭言

「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し」。

これは、山形学習センター(山形SC)同窓会誌『ゆうがく』巻頭言のタイトル。本日は、この巻頭言を転記します。1年に4回、2つの機関紙に巻頭言を記しています。巻頭言の執筆、なかなか難しい。

「学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し」。これは、『論語』「為政第二」の箴言で、大意は以下の通り。

「聖賢の言行を学ぶことは大切だが、自分自身で考えなければ身につかない。反対に、自分の考えにとどまり聖賢の教えを学ばないと確固とした信念にはならない。要は、学んでは思い、思っては学ぶことで進歩がある」。

この箴言は、学問する時の要点を簡潔に示している。聖賢の書を読んでは考え、考えては聖賢の書を読む。これは、今までも、今も、これからも重要に思う。

それでは、「学問は、何のためにするのか」。この問いの応えは、人それぞれに異なるだろう。

私達の多くは、会社等の組織に属して仕事に従事し、辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、楽しいこと、嬉しいことを体験し、日々学びながら成長する。

生涯を通じ多面的に成長し続けるには、学問により人間力と専門力を身につけることは必須で、学問は、生きる限り必要に思う。

東洋哲学の泰斗、安岡正篤先生は、学問する意義を『荀子』から引用する。「夫れ学は通の為に非ざるなり。窮して苦しまず、憂えて心衰えず、禍福終始を知って惑わざるが為なり」。

「学問するのは、どんな心配ごとがあってもへこたれず、何が禍いで何が幸福かを知り、人生の複雑な問題に直面しても、惑わないためである」と述べる。学問することは「知識を習得する」だけでなく、「人物を作る」ことでもあるとの教え。学問を通じて人間力を身につけ人物を作る、重要に思う。

最近、「チャットGPT」にお世話になる機会があった。今年12月に国際シンポジウムの基調講演を依頼され、この1ヶ月間に5冊の専門書を読みシンポの準備を行った。

私の基調講演の演題は、「環境科学を踏まえた21世紀の農学の重要性:過去・現在・未来の課題と挑戦」である。

この演題を「チャットGPT」に入力した。そうすると、「環境科学を踏まえた21世紀の農学の重要性は、過去、現在、そして未来の農業における課題と挑戦に対処するために不可欠です。

以下に、それぞれの側面について詳しく説明します」、と回答。そして、「チャットGPT」は、「過去の課題」、「現在の課題」、「未来の挑戦」の詳細な応えを示した。

参った。私が1ヶ月かけ5冊の専門書と私の経験を元に構成した講演内容の本質部分を3秒で簡潔に記述する。しかし、これで一件落着ではない。記された回答を吟味し、その取捨選択と肉付けが必要である。

「学んでは思い、思っては学ぶ」は、科学技術の進歩により、今後益々重要になる「チャットGPT」等との付き合いにおいても必要に思う。

これからの世の中、科学技術の進歩は、私達の生活や仕事を激変させるだろう。

しかし、世の中が如何に変わろうとも「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し」は、常に私達の日常生活で重要だろう。2500年前の孔子の箴言は、時代が如何に変わろうとも必要に思う。

『気力旺盛』(安岡正篤 一日一言)

「気力が旺盛であるということが個人的にも民族的にも最も大事なことで、気力を弱くしてしまったら、教養が多少あろうが、頭脳・知性が優れていようが、技能が発達していようが問題でない」。

「気力というものが一番大事で根本的なものである。日本民族もこの気力を失わなければ、気力が旺盛になれば、いろいろの欠陥は少しも苦にする必要はない」。

「反対にどんな長所があっても、例えば知性だ、技能だ、その他教養があるといっても、気力が旺盛でなければ個人も国家も発展しない」。

何時までも『気力旺盛』でありたいと思います。

2023-10-19

2023年度2学期、山形SC「入学者の集い」

放送大学の入学は、1年に2回、4月と10月です。入学式に相当するのが「入学者の集い」。この「入学者の集い」も1年に2回実施。

山形学習センター(山形SC)「入学者の集い」では、所長挨拶の後、入学者へのガイダンス、サークル紹介等が行われます。

2023年度2学期の「入学者の集い」を、10月15日午前11時から約1時間実施。本日は、「入学者の集い」での所長の祝辞の一部抜粋を記します。

祝辞では、「積極的に学びを楽しむ、縁を大切にする、学びの習慣の必要性」の3つを紹介。

「まず、一つ目は、貴重な学生生活を積極的に楽しんで頂きたいと思います」。

「孔子は、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」と、楽しむのが一番であると教えています」。

「また、京都大学16代総長平澤興先生は、「二つの教育があり、一つは他人から受ける教育であり、他の一つは、これより大切なもので、自らが自らに与える教育である」。

「それは、習ったものをもとにして自らの工夫でいかに自らを導き、いかに人生を生き抜くかという覚悟と実行であり、これが本当に身についた教育である」と述べています」。

「自らが自らに与える教育、重要に思います」。

「大学では、自ら学ぶゼミも重要で、山形学習センターも理系・文系の9つのゼミ、「学びのサロン」があります。「是非、積極的に「学びのサロン」等に参加して自らの学びを楽しんでください」。

「「放送大学歌に「生きるとは学ぶこと、学ぶのは楽しみ」、「生きるとは知ること、知ることは喜び」との歌詞があります。その通りに思います」。

「二つ目は、縁を大切にすることをお話しします。結縁と書いてケチエンと読みます。これは聖徳太子が縁の重要性を示された言葉です」。

「放送大学での学生の皆さんの出会いには、面接授業や課外活動及び「学びのサロン」等があります」。

「通学制の大学に比べると通信制の放送大学では、学生同士の出会いの機会は少ないのが実情です」。

「是非、課外活動への参加や「学びのサロン」等を通じた出会い、縁を大切にして下さい。そして、多くの友人を作り学生生活を楽しむことをお勧めします」。

「私の人生を今振り返っても、色々と困難に直面した時、助けてくれたのは友達でした。また、人生を豊かにし、人生を楽しめたのも友人との付き合いでした」。

「今の私があるのは色々な良い縁、結縁の賜物と思います。結縁、縁を大切にして下さい」。

「最後に、「生涯、学びの習慣の重要性」をご紹介します。幕末の儒学者、昌平黌の総長、佐藤一斎先生の著書に『言志四録』があります。これは、西郷隆盛先生の座右の書です」。

「その中に、「三学戒」という箴言があります。「二度ない人生には、生涯学びの習慣を持つことが、重要である」と言うのが核心です。私もそう思います。ご紹介します」。

「「少(わか)くにして学べば、壮にしてなすあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」との箴言です」。

「放送大学は、「教養学部」一学部の大学です。他の大学と異なる点は、卒業までに多面的な教養を学び、それを身につけて卒業することです」。

「人生百年時代の今、教養を身につけることにより人生が豊かになります。是非、多面的な教養を中心にした学びの習慣を身につけ人生を楽しんで下さい。人生二度なしです」。

新入生の皆さんが、楽しい学生生活を過ごし、充実した実り多い学びになることを期待しています。

『教育の役割』(平澤 興 一日一言)

「教育とは火をつけることだ。教育とは火をつけて燃やすことだ。教えを受けるとは、燃やされることであり、火をつけられることです」。

「相手の心に火をつけることは、ただ一方的な命令やおしつけでできるものではなく、こちらも燃えて相手と一つになり、相手のかくれた可能性を見いだして、これを燃やすことである」。

『教育の役割』、「相手のかくれた可能性を見いだして、これを燃やすこと」、肝に銘じたい箴言です。