2021-03-31

令和2年度最後の日、山形SC学位授与式

本日は、令和2年度最後の日、3月31日。明日からは、令和3年度、新年度の始まり。学校では新入生が、会社等では新入社員が活躍する時期です。放送大学も新学期が始まり、新たな出会いが始まります。

本日は、新たな出会いの前のお別れ、3月28日の放送大学山形学習センター(山形SC)学位授与式について少しお話します。

放送大学は、2学期制で9月末と3月末に学位授与式があります。今回は、30名の卒業生と1名の大学院修了生。学位授与式の参加者は、15名と1学期の参加者3名の5倍。

卒業生には、この1年間で色々とお付き合いした方々もおられ、嬉しい日でした。卒業生の皆さんは、色々な困難を克服されて学び続け、晴れてご卒業。学位授与式の良さを改めて感じました。

卒業者30名の2名は、6コース全てを修了された名誉学生。2名は3コースを修了された生涯学習奨励賞受賞者。本当に頭が下がります。

式辞として三つのことをお話しました。その一部を紹介します。まず、卒業は、新たな挑戦に向かっての出発である。次に、二度ない人生で教養を身に着ける重要性。最後に、生涯、学び続ける習慣の必要性です。

米国では、卒業のことを、コメンスメントと言います。これは、「新たな生活の始まり」、「出発」を意味します。私も卒業は、新たな出発に思います。人生の節目は重要です。

「大学卒業」は、人生の中でも大きな節目、「新たな生活の始まり」として、重要な節目の一つに思います。

ご卒業を一つの節目とし、放送大学で培った幅広い教養を元に新たな人生に楽しく挑戦して下さい。人生二度なしです。

二つ目は、「二度ない人生で教養を身に着ける重要性」をお話しました。放送大学は、「教養学部」一学部の大学です。

他の大学と異なる点は、卒業までに多面的な教養を学び、それを身につけ卒業することです。これから人生百年時代に向かい、教養はとても重要で、それは、二度ない人生を豊かにします。

他大学にない、多様で深い教養を身につけ放送大学をご卒業されることに、誇りと自信を持って頂ければ嬉しく思います。

東洋哲学の泰斗、安岡正篤先生は、中国の思想家、荀子の箴言から、学問し、教養を身に着ける意義を簡潔に述べておられます。

「それ学は通の為に非ざるなり。窮して苦しまず、憂えて意(こころ)衰えず、禍福終始を知って惑わざるが為なり」。

学問するのは、どんな心配ごとがあってもへこたれず、何が禍いで何が幸福かを知り、人生の複雑な問題に直面しても、惑わないためである。

学問は「知識を習得する」だけでなく、「人物を作る」ことであるとの教えです。学問をし、人物を作る、重要に思います。

最後に、「生涯、学び続ける習慣の必要性」を紹介しました。幕末の儒学者、昌平黌の総長、佐藤一斎先生の著書に言志四録があります。これは、西郷南洲翁の座右の書です。

その中に、「三学戒」という箴言があります。「二度ない人生には、生涯学びの習慣を持つことが、必要である」と言うのが核心です。私もそう思います。

「少(わか)くにして学べば、壮にしてなすあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」との箴言です。すでに皆さんは、学びの習慣を持っておられます。是非、継続して下さい。

卒業される皆さん、おめでとうございます。学位授与式いいですね。

『知識、見識、胆識』(安岡正篤 一日一言)

「いつも申しますように、識にもいろいろあって、単なる大脳皮質の作用に過ぎぬ薄っぺらな識は「知識」と言って、これは本を読むだけでも、学校へのらりくらり行っておるだけでも、出来る」。

「しかし、この人生、人間生活とはどういうものであるか、或はどういう風に生くべきであるか、というような思慮・分別・判断というようなものは、単なる知識では出て来ない」。

「そういう識を「見識」という。しかし如何に見識があっても、実行力、断行力がなければ何にもならない」。

「その見識を具体化させる識のことを「胆識」と申します。けれども見識というものは、本当に学問、先哲・先賢の学問をしないと、出て来ない。更にそれを実際生活の場に於いて練らなければ、胆識になりません」。

「今、名士と言われる人達は、みな知識人なのだけれども、どうも見識を持った人が少ない」。

「まだ見識を持った人は時折りあるが、胆識の士に至ってはまことに寥々(りょうりょう)たるものです。これが現代日本の大きな悩みの一つであります」。

「胆識」、心に残ります。日々精進したいと思います。

2021-03-29

放送大学山形SC、トップセールス

「良い教育プログラムを作成し学部改組しても、入学希望者が少なければ終わりです。入口(入学希望者)と出口(就職受入先)調査を実施し、その結果を踏まえて改組してください」。

これは、大学改組時、文科省担当者の定番助言。大学では、入学希望者数の増減、とても重要です。

全国の国公私立大学は今、18歳人口の減少で学生確保が喫緊の課題。山形大に勤務時は、国際交流も担当。留学生の受入増加で山形大入学希望者の増加にも尽力。

老若男女の皆さんが、入学試験なしで入学可能な放送大学。昨年度まで5年間、1学期と2学期ともに入学希望者は、毎学期減少。

学生確保は、放送大学でも喫緊の課題の一つです。私の今年度1年間の業務の一つは、トップセールス(組織の長による営業活動)での学生確保。

1学期は、コロナ禍でセールス活動が制限。2学期は、それが多少緩和され1年間で、職員の皆さんと33ヵ所の関連機関を訪問し、放送大学や山形学習センター(山形SC)を紹介。

多面的な情報及び意見を交換しました。「出会いと学び」は、楽しみの一つ。良い出会に多くを学びました。面会した皆さんや同伴してくれた職員の方々に感謝です。

今年度の山形SC広報活動、2つの方向性を決め、実施しました。「一つは、新規の入学希望者の地道な開拓。特に、関連機関等を訪問しての紹介やSNS等による情報発信を重視。二つ目は、在学生や卒業生へのきめ細やかな対応を通じた再入学者の増加」です。

また、放送大学本部からの情報も広報活動の参考になりました。例えば、入学検討は、インターネットと口コミで55%、新聞や雑誌記事は、それぞれ1%前後とのこと。

「入学検討には、インターネットと口コミが重要で、新聞や雑誌記事は、ほとんど機能していない」ことが判明。貴重な調査結果でした。

今年度は、大学等高等教育機関の長、副知事、市町長、小中学校長及び校長会、教育長、病院長及び看護部長、国際交流機関長等を訪問。訪問紹介は、極めて重要と感じました。

今年度の広報戦略は、質の異なる多くの機関を訪問しての予備調査。これらの結果を通じ来年度以降の広報戦略策定が目的の一つ。

訪問紹介では、相手が話を聞き、放送大学をよく知る機会になる。現場の実態が知れ、知恵や提案が有り難い。

ある教育長は、小中学校の校長会で放送大学を紹介。さらに、放送大学職員が校長会での紹介を提案。

某学部長は、その学部での面接授業を提案。また、ある学長は、パッケージ型単位互換制度を提案。

そして、某市長等は、高卒職員が大卒資格取得による昇給を紹介し、当該職員に推奨。

来年度は、今年度の経験を活かし、諸機関の退職者セミナーでの紹介や専門学校及び高等学校等との連携、さらに大学等との単位互換等々も行う予定。

春からも「トップセールス」。「セールス業務」は、大学での教育や研究とは異なりますが、大学経営の観点では類似。「出会いと学び」楽しみます。

2021年度1学期出願者数は、2020年度1学期より増加。「たかが結果、されど結果」。少し嬉しいです。訪問した関連機関の方々や山形SC職員の皆さんに感謝。

学生の皆さんの満足度の高い、学生中心の山形SCを目指したいと思います。

『ゆっくり急げ』(平澤 興 一日一言)

「やればできるのである。しかし、急ぎすぎてはならぬ。「ゆっくり急げ」という言葉があるが、よい言葉である」。

「やってみても、なかなか自分の思うようにはいかぬことが多いが、くさらずに続けることである。希望を持って続けることである」。

「やればできる」、そう思います。「思うようにいかなくても、希望を持って続ける」、重要に思います。「継続は力」、今までも、今も、これからも必要です。

2021-03-27

果物の里、松ヶ岡、ブドウ栽培始まる

明治の初めに約3000人の武士が300ha の荒野を開墾し、農地にした松ヶ岡。絹織物の全盛期には、養蚕業が主要産業の一つ。そして、庄内柿の産地でもあります。その後、桃も栽培し、「果物の里」になりました。

「忠犬クニオ」との朝の散歩では、柿畑桃畑を見ながらのウォーキング。これらの果樹は、まもなく開花し、桃は美しいピンクの花、リンゴは白い花が咲きます。私の家の周りは、全て果樹園や畑及び水田。のどかでホノボノとした環境、有難いです。


この果樹の里、松ヶ岡。鶴岡市内の企業がワイナリーを作り、昨年からワインを醸造。ワイン用のブドウが2017年から栽培。柿と桃にブドウが加わり、果物の里、多様性が増加。



ワイナリーの社長さん、80歳を超えていますが、とても若く溌溂とした元気な方。夢があり、その実現に向けての努力。それが、若さの維持に繋がると思いました。

夢を描き、その実現に向けての挑戦。二度ない人生、重要に思います。

サミエル・ウルマンの「青春」の詩が浮かびました。

「青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦(きょうだ)を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ」。

「年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。人は信念と共に若く疑惑と共に老ゆる。人は自信と共に若く恐怖と共に老ゆる」。

「希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り、人の若さは失われない」。

「青春とは、心の様相である」、そう思います。「創造力、意志、情熱、勇猛心、冒険心」、若さの維持に重要です。

今日も「クニオ」と果樹園の周囲を楽しく散歩。果樹から元気をもらいました。有難いです。健康に生活できることに感謝。

『燃える心』(平澤 興 一日一言)

「生きるとは、情熱を持って燃えることだと思います。燃える心を忘れているような生き方は、気の毒な生き方ではないでしょうか」。

幾つになっても「燃える心」、必要に思います。

2021-03-25

松ヶ岡、菅原兵治先生と耕心碑

私が住む鶴岡市松ヶ岡には、菅原兵治記念館があります。菅原先生は、東洋哲学の泰斗で昭和の政財界の御意見番、安岡正篤先生の一番弟子。


昨日、忠犬クニオと松ヶ岡お散歩コースを歩き、菅原兵治記念館前の箴言を一読。そして、菅原記念館を訪問。「耕心」の石碑と白梅を撮り、『耕心』を思い出しました。


『耕心』は、昭和27年に創刊され、その表紙裏に「しづく」または「滴語」として記された先生の随想集が『耕心滴語』。味わい深い随想集です。


菅原先生は、昭和21年旧荘内藩酒井家や多くの有志の強い要請により東北農家研修所の所長として宮城県から松ヶ岡に移住。その後、昭和49年の研修所閉所まで、所長として約730名の若人を育成。修了生は、各界で活躍。

先生は、研修所で「我づくり」を基本に「己を修めると共に、人のため、世のため、国のために役立つ人間となる必要性」を説かれ「修己治人」を教えられた。

そして、「自己の徳を大成し、自己の材能を錬磨する必要性」と「治人、斉家、治国、平天下の基本は、あくまで「己を修める」こと」を示された。

また、「我づくり」の要点として、「一、自分の足りない所を自覚する。二、それを改めようと志を立てる。三、良き師友を求める。四、継続的努力をする」ことを説かれた。

そして、この心で自ら学び、人に接し、事に当たり、世を見つめて「我づくり」に努力。

「教育荒廃の原因には色々あると思うが、最も根本的なものは、教育が真の人間を造るということを忘れたこと。その人間を造る教師が、師道を喪失し師徳を涵養することを閑却したことにあると思う」と指摘。

朝のクニオとの散歩で、先生を思い出し、その教えを学び直しました。

『気力旺盛』(安岡正篤 一日一言)

「気力が旺盛であるということが個人的にも民族的にも最も大事なことで、気力を弱くしてしまったら、教養が多少あろうが、頭脳・知性が優れていようが、技能が発達していようが問題ではない」。

「気力というものが一番大事で根本的なものである。日本民族もこの気力を失わなければ、気力が旺盛になれば、いろいろの欠陥は少しも苦にする必要はない」。

「反対にどんな長所があっても、例えば知性だ、技能だ、その他教養があるといっても、気力が旺盛でなければ個人も国家も発展しない」。

菅原先生は、81年の生涯にわたり気力旺盛の人。何事をなすにも「気力旺盛」は重要に思います。

2021-03-23

弥生3月、別れの季節

 人生には数多くの出会いがあり、それと同じくらいの別れがあります。「弥生3月、別れの季節」。

先週は、昨年3月まで3年間一緒に大学運営に携わった山形大理事が、「お別れの挨拶」に来訪。

その理事とは、色々と「縁」あり。私が農学部長の時、農学部は、3学科から1学科へ改組を決め文科省と事前相談を実施。その時の文科省担当官。

学部改組が、3月に文科から了承。そして、その方は、4月に山形大の総務部長として異動。「縁」です。その後、2つの大学を経て、山形大理事として異動されて同僚。「縁」です。

来訪時に、色々と昔話もし、農学部改組を思い出しました。本日は、今から10年前、平成22年(2010年)の「農学部組織改革」について少し紹介します。

平成16年(2004年)から始まった国立大学の独法化は、「国立大学が、自由な運営により、個性豊かな魅力のある大学になる」ことを目的としていました。

独法化後、東北及び北海道の国立大学農学部では、岩手大が平成19年度、弘前大と帯広畜産大が平成20年度に改組し、さらに秋田及び宮城県立農業短期大学が4年制大学になる等、農学系学部の改革が実施。

この状況を反映したのか、山形大学農学部改組前では、前期入試倍率が2倍を切り、農学部存続の危機感。

当時の山形大農学部「個性豊かな魅力ある学部」でもありませんでした。私は、学部長になると直ぐに、農学部の改革を宣言し「農学部将来計画検討委員会」の委員を元気な中堅教員に変更して、「改革」に舵を切りました。

この改革では、教育目標として、1)農学に含まれる食料、生命、環境科学の基礎と諸課題を総合的に学習し、それらの基礎知識や実験・実習から得た体験等をもとにした総合的判断力を有した人材の養成。

2)これらの総合的判断力をもとに、安心・安全な農産物と食品の生産及び森林、水土等の環境保全や環境問題の解決に関する高度な専門職業人及び研究者の養成を掲げました。

そして、目標を具現化するために、1)1年次及び2年次には、農学及び食料生命環境学コアカリキュラムや基礎専門教育の整備と充実。

2)3年次以降では、実験、実習、演習を主体とした課題解決型教育プログラムの導入を図りました。

さらに、3)食料生命環境学実験実習等を学部共通科目とし、4)6つのコースが連携して開講する数多くのコース連携科目を整備。

また、教育の順次制を重視して、学生諸君が学びやすいように教育を体系化し、授業科目も精選して、できる限り科目数を減少。

さらに、講座内での異質な学問分野の混在を整理し、出口を見据えた教育体系に改めたのも特徴。

組織改革だけでなく、運営制度の改革も実施。学務委員会や入試委員会等、重要な委員会の委員長は、学科のローテーションではなく、農学部執行部役員を委員長に任命。

そして、執行部の意向を主要会議に反映しやすい制度に改革。さらに会議数を半減させ、教員は教育と研究に専念できる環境に整備。

一方、組織を改革しても意識の改革は難しい。そこで荘内銀行の組織改革と意識改革を実施し、荘内銀行を蘇生された町田荘内銀行会長に「組織改革と意識改革」との講演を依頼。結構大変な改革でした。この「改革」が実行できたのは、教職員の理解と協力の賜。皆さんに感謝です。

この改革により、山形大6学部の組織評価、農学部は、工学部と同点で山形大第一位の評価。800万円を得ました。

私が組織評価の発表を終えると、評価者として何時も厳しい意見の経営協議会委員が、「貴方の発表が一番。とても素晴らしい発表だ」と絶賛。とても嬉しかったのを覚えています。

元文科省事務官の理事訪問で、10年前の農学部改革を懐かしく思い出しました。貴重な経験と勉強の「改革」でした。

『やる気はあるか』(平澤 興 一日一言)

「天才とか鈍才とか言いますが、あまり変わりがありません。結局は、やろうという根性だと思うのであります。これがなければ、たとえ優等生でも、その将来はあまり大したことはないと思うのであります」。

「やろうという根性だと思う」、同感です。農学部改革の時も、いまやらなければ終わる。使命感、危機感、スピード感、「やろうという根性」でした。「やる気はあるか」、何事においても重要に思います。

2021-03-21

「環境科学の挑戦」『学びのサロン』最終回

山形学習センター(山形SC)の学生の皆さんにも、ゼミを通じ自らの学びを楽しんで欲しいと始めた「学びのサロン」。私担当サロンは、「農学とその挑戦について学ぶ」。3月19日、最終回。


今回は、飛び入り参加の20代前半の男性も含め、老若男女7名。担当はMさん。分かりやすいレジュメを作成し、説明。最終章第5章『環境科学の挑戦』は、私が執筆

本日は、「学びのサロン:農学とその挑戦について学ぶ」最終回を紹介します。参考書は、『農学が世界を救う』。「過去30年の最も顕著な農学の変化は、1)生命科学の発展と、2)環境科学の新展開です」とは、第1章執筆者、生源寺先生の説明。

第5章は、9つの項目から構成。まず、「環境科学って何だろう」では、「環境科学」は、色々な環境問題や多様な生物の生活の仕方と環境との関わり及び、自然のバランスの維持機構等を扱う学問であることを説明。

次は、生態系の中で生き物等が行う色々なサービスについて触れた「生物による生態系サービスと農業との関わり」。4つのサービス、基盤、供給、調整、文化的サービスを概説。

農業は、農薬散布による生物濃縮等を通じヒトを含めた多くの生物や環境に多大な影響を与えています。その反省から環境への影響を小さくする農業が注目。それらを「環境保全と生物を活用する農業」として紹介。

そして、環境を保全し、資源を循環させる究極の農業、生態系サービスを活用し肥料や農薬及び除草剤等の化学資材を使わない「無肥料・無農薬・無除草剤でコメ作りに挑戦」について触れる。

これは私たちが、10年以上前から山形大で取り組んできた研究の紹介。

これまでに数多くの生き物が日本に入り色々な問題を起こしています。これらの外来種問題を扱った「海外からの生き物とそれが私たちの生活に与える影響」を概説。

さらに「生物群集での多様な生物の役割」として、私が20年以上研究した動物の糞を餌とする甲虫の仲間、糞虫の個体数決定機構を解明した研究等を紹介。

21世紀のキーワードの一つは、「生物多様性」。生物多様性の維持は、自然環境のみならず、農林水産業の場でも避けて通れない問題。そのような背景から「農業生態系での生物多様性の役割」にも触れました。

また、現在、我々が直面している大きな問題の一つが「自然環境の破壊」。それに関して「自然環境の破壊と修復及びその影響」として概説。

最後に、若い皆さんが私たち生態学研究者と一緒に多くの環境問題を解決してくれることを期待した「環境科学の挑戦」で第5章は終わります。

担当者のMさんは説明の後、「今回の学びから個人としてどのような実践ができるだろうか?」と自らの提案を資料に記して紹介。

それには、「化学肥料から有機肥料への切り替え。生物の持つ力を活かす。無農薬に挑戦。防除は手作業で行う。混植により生物多様性を活かす」等が記され、それを説明。この紹介が終わると拍手喝采。ホノボノとした温かい雰囲気の「サロン」、最高です。

参加者の皆さんからの意見や質問の一部を以下に紹介します。

「温室効果ガスは、工業の産物だと思っていた。少し調べたところ農業も温室効果ガスを排出していることが分かり驚いた。第5章では、自然との共生も強調されており、ホッとする」。「水田でカルガモ農法が行われていると聞くが、これはどのようなものか」。

「沖縄では、ハブの被害を軽減させるためマングースを導入した。それがヤンバルクイナの個体数減少に大きな影響を与えた。このような導入種による生物の防除等は、注意を要すると感じる」。

「自然を支配するとの人間の考えは傲慢に思う。自然と共存する生き方が、これからも重要と感じる」。

「本書の題名「農学は世界を救う」は、どのような意味なのだろう」。「これまで学んだ章の中で、第5章が最も分かりやすく、農学を感じた」。

「サロン」での意見交換を通じ、若者のみが学生の「大学」と意見や感想の質の違いを感じました。それは、「参加者の皆さんの人生経験の豊富さと考えの深さ」に起因しているのでしょう。

「学びのサロン」、老若男女が相集い、質の高い学び。今回も楽しみました。参加者の皆さんに感謝です。

学生の皆さんだけでなく、私にもとても刺激と学びになる「サロン」。「老いて学べば、死して朽ちず」、学びの重要性を再認識。最後に、来年度の私の「サロン」の予告をして終わりました。

「サロン」が終わり、飛び入り参加の20代の学生さんと色々な話をしました。

「このようなサロンで先生と話ができるのはとても嬉しい。山形SCでは、これまで先生と学生が話す機会がなかった。これからは、「サロン」に出席して先生や学生の皆さんと色々と話をしたい」。

「サロン」を企画して良かったと思いました。霞城セントラル10階の山形学習センターから見る山形市内の風景。

『やればできる』(平澤 興 一日一言)

「やればできるのです。やればできるのであります。ノイローゼとか、神経衰弱とか、なんていうのは、まあ、ぜいたく病であります。本当に、命をかけてやろうというとき、なかなか命は、なくなるようなことはないのであります」。

「やればできる」、「やればできるのであります」。やった人にのみ言える言葉。肝に銘じたいと思います。

2021-03-19

放送大学、看護師学生数第2位の『謎』

放送大学の職業別学生数は、会社員等が1番で2番目に多いのが看護師さん。全国約9万人の学生の12%、約10,800人が看護師さんです。そして、看護師さんの入学目的55% は、学位取得。

山形学習センター(山形SC)の学生数、全国と同じく第2位が看護師さん。70から80名。これらの学生数を年代別に見ると、40代から50代が65%と最も多い。20歳代は、8%。この『謎』を解明するため、山形大医学部を訪問。

山形大医学部附属病院長は、私の前職、理事・副学長特別補佐の一人。大変お世話になりました。

今回の訪問は、お世話になったお礼と看護師の『謎』解明が目的。そのため看護部長さんにも同席してもらいました。

看護師さんの『謎』、予測は「学位取得で給料が増加」。しかし、この予測は、外れました。

看護部長さんの話では、「病院により温度差はあるが、学位を取得しても、国公立病院では、給料増加には直結しない」とのこと。

最近は、医学部に看護学科があり、大学卒の看護師さんも増加しています。かつての看護専門学校で看護師資格取得と状況が変化。山形大附属病院でも3割程度の若い看護師さんは大卒。

「このような状況の変化に刺激され、40代以降のベテラン看護師さんが、大卒資格を得るため放送大学で学ぶ」のではないかとのこと。なるほどと思いました。

今回の訪問では、持参資料に一工夫。3種類の薄い資料をファイルケースに入れ、そのケースの表に3種類の図を掲載

最初に「放送大学学生数の2番が看護師である円グラフ」。次に、「看護師の入学目的の55%が、学位取得の棒グラフ」。最後は、「看護師さんの数は、山形SCでも2番目で70から80人の棒グラフ」。

さらに「看護師の場合、学位は2年間で取得でき、授業料等は36.5万円(国立大は、卒業まで約240万円)」と学位取得の特徴も記述。

また、ファイルの資料も厳選。まずは、『看護師の皆さんが、放送大学で得られる5つのメリット』。「最短1年で学士(看護学)の申請に必要な単位が取得可能」。「最短2年で大学卒業を目指せる」、等々。

そして、『看護師の皆さんが、放送大学で大卒&看護学の学位を取得するコツ』『学士(看護学)の取得を目指す方へ』のパンフレット。


放送大学入学者獲得の「営業」では、如何に「魅力的で簡潔な情報」を提供するかが重要。この資料を附属病院25診療科分準備し、ファイルに各診療科の名前を記して看護部長さん渡す。

そして、各診療科で回覧してもらうことをお願いして「業務」終了。病院長と看護部長さんにお世話になりました。感謝です。「縁」の有り難さを感じました。

『誠を尽くす人』(平澤 興 一日一言)

「少々くらい賢くなさそうでも誠実で、仕事に対して人に対して本当に誠を尽くすような人は、必ず何かになります。これは、私が70年生きてきて、色々な例を見てきて、そう思うのであります」。

「誠を尽くす」、重要に思います。

2021-03-17

山形学習センター『所長と話す会』

昨年4月、放送大学山形学習センター(山形SC)所長に就任し、アッと言う間に1年が経過。「光陰矢の如し」を感じます。

この1年間、新たな試みも企画して、実行しました。その一つが、私と学生の皆さんが意見交換する『所長と話す会』

今年度第2回目の『話す会』を3月12日に開催。本日は、『話す会』での意見などをツブヤキます。今回の『話す会』では、初めに昨年6月開催、第1回『話す会』の意見とそれへの対応を紹介。

次に『進化する山形SC』として、今年度行った新たな試み『学びのサロン』や『人間学を学ぶ会』、さらに来年度の『面接授業』のトピックスなどを説明。そして、最後に意見交換の三部作での『話す会』。

この『話す会』の目的は、学生の皆さんから1)学習内容や環境に関する多面的な意見を聞き、2)お知恵を拝借して、3)山形SCの改善や改革を通じ、「学生の皆さんの満足度が高い山形SCを目指す」こと。

当日は、8名の老若男女の学生の皆さんが出席。大変有意義な情報及び意見交換の1時間でした。

「今年は、震災10年目。これまで山形SC研修旅行で宮城や福島の震災地を訪問し、現地の方々から多面的に学んだ。これは座学では得られない貴重な体験。今後も研修旅行の継続をお願いしたい」。

「放送大学では、パソコンを使えることが必須になりつつある。初歩のパソコン教室を開催して欲しい」。「山形SCは、宮城SCと比較すると情報発信が少ない気がする」。

「山形SCの敷居が高く感じる。気楽に来られる雰囲気だと嬉しい」。「山形SCの事務の皆さんは、大変親切で温かい」。

これらの意見等に対して、いくつか応えました。「コロナが落ち着いたら研修旅行も再開する予定である。2月に2回、パソコン教室を開催した。これからも開催する予定なので出席ください」。

「敷居を低くする企画も考えている。それに参加することで敷居も低くなると思う。例えば、今年5月から開催する『学びのサロン』。毎月7名の教員で実施。全て参加すると毎月7回は山形SCへの来訪となる」。

「山形SCでは、サークル活動も行っている。これらへの参加や、自ら友人とサークルを結成して、学生生活を楽しんで欲しい」、等々。

1時間の意見交換、とても貴重で実り多い時間でした。少しずつ色々なことを企画し、学生の皆さんが気軽に訪問できる山形SCにしたいと思います。忙しい処、参加された皆さんに感謝です。

通信制でない大学、土日以外は、大学での学生同士の交流が可能です。通信制の放送大学は、「何時でも、何処でも、誰でも」学べる半面、学生同士の交流機会が少ないです。

今後は、色々な企画を考え学生同士や教職員と学生の皆さんが触れ合う機会を作りたいと思います。

写真は、霞城セントラル10階の山形SCから見える月山の一葉。

『正しさを伝える』(平澤 興 一日一言)

「正しさということは絶対に必要なことでありますが、それには素晴らしい幅があって、正しいことをしかも冗談のように相手にわからせ、しかも相手に守らせることができれば、一人前であります」。

「正しいことを冗談のように相手にわからせ、守らせる」、心にしみます。「一人前」に向けて、日々、精進したいと思います。

写真は、鶴岡市松ヶ岡から見た月山の一葉。


2021-03-15

放送大学、学習センター所長会議

放送大学には、全国に50の学習センターなどがあります。これらのセンターは、全国ブロックに分かれています。山形学習センター(山形SC)は、北海道・東北ブロック、7つの学習センター(SC)が所属。

ブロック毎のセンター所長会議は、1年に3回。今年度、最後の会議が3月上旬に開催。新米所長の私は、会議で学び、その後、情報交換会で情報収集したい処でしたが、今回もZOOM会議。

今回は、今年度最後の会議で、各所長が「この1年の各SC運営について」を紹介。7人の所長、それぞれ人柄が出た資料と説明。各SCの取り組み、とても参考になりました。

特に、今年度は、コロナ禍でのSC運営。行動に制約がある中、各SCは色々と工夫をして運営。各SCの類似した取組では、客員教員のゼミや講演会、県内の各市町村役場や図書館等を訪問し、学生募集の協力依頼。

放送大学の学生数は、昨年度までの5年間1、2学期とも継続して減少。広報活動を通じた学生数増加は、喫緊の課題。当ブロックでも共通の大きな課題。

各SCの特徴ある取り組みも参考です。北海道SCでは、看護師や准看護師対象の説明会にも力点。看護師の学生数は、全国的に会社員等の次ぎ、2番目に多い数。看護師等の掘り起こし、重要です。

岩手SCでは、客員教員会議を開催。山形SCでも来年度から実施し、教員からお知恵をいただく予定。

宮城SCは、今年度建物の耐震工事終了による移転が一大事業。オンライン新聞ネット広告や地下鉄構内広告等は、参考になりました。

北海道・東北ブロック、山形SC以外の7つのSCは、全て各地域の大学内です。山形SCだけ母体校がなく、山形駅西口霞城セントラル10階

学生数も各SCで温度差。北海道SCは学生数最大、約3500名。宮城SCは、約1800名と、これらは大規模。山形SCは、最も小規模で約500名。山形SC、学生数の増加が最大の課題。

山形SCは、1. 地域の文化や高等教育の中心として多彩な皆さんが集う「結縁のセンター」、2. 日本と外国の方が学び交流する「多文化交流のセンター」、3. 人生を如何に生きるかを学ぶ「人間学の学びのセンター」を目指すことを紹介。

下述は、私の名刺の裏に記した山形SCの目標です。

そして、3つの目標の具体策を簡単に話しました。

さらに来年度の面接授業のトピックスとして、英国・ペルーなど外国出身教員の授業、『世界一受けたい授業』で紹介された教授の講義、これまで未開講の『情報学の学び』や『看護の学び』の開講を紹介。

同じ苦労をしている所長同士、とても良い勉強と刺激になりました。各所長の皆さんに感謝です。コロナが下火となりZOOM会議から、担当センターでの会議開催を期待しています。

写真は、3月上旬に撮した鶴岡市湯野浜からの鳥海山、私の好きな景色です。

『アドバイス』(平澤 興 一日一言)

「真に相手のためになるアドバイスは、決して容易ではなく、ただ思いつきだけではだめで、何より大事なことは、相手の性質や気持ちまでもよく考えて、相手の心にそのまま素直に入るものでなければならぬ。これには、深い愛情と鍛えられた人生の知恵が要る」。

「アドバイス」、簡単なようで簡単ではないですね。「相手の心にそのまま素直に入る」アドバイスをしたいです。

写真は、山形SCから見た月山の一葉。