人生を振り返ると、人生の大きな節目の一つが、大学卒業に思います。
9月25日(日)、放送大学山形学習センター(山形SC)で学位授与式があり、13名の方がご卒業されました。本日は、学位授与式の「式辞」を少し紹介します。
「式辞」では、三つのことをお話しました。まず、卒業は、新たな挑戦に向かっての出発である。次に、二度ない人生で教養を身に着ける重要性。最後に、生涯、学び続ける習慣の必要性です。
「卒業は、新たな挑戦に向かっての出発に思います。米国では、卒業のことを、Commencementと言うそうです。これは、出発とのことです。私も卒業は、新たな挑戦に向かっての出発に思います」。
「現代経営学の開祖にして未来学者とも呼ばれたピーター・ドラッガーは、「21世紀に重要視される唯一の能力は、新しいことを学ぶ能力である。それ以外は、全て時間とともに廃れていく」と述べています。「言い換えると「これからの時代、新たな事への挑戦が人生を分ける」とも言えます。本質を突いた箴言に思います。是非、卒業を機会にさらなる挑戦、新たな出発を期待しています」。
二つ目は、二度ない人生で教養を身に着けることの重要性を述べました。「教養学部一学部の放送大学の特徴は、卒業までに多面的な教養を学び、それを身につけ卒業することです」。
「これから人生百年時代に向かい、教養はとても重要で、それは、二度ない人生を豊かにします」。
「お茶の水女子大学名誉教授で数学者の藤原正彦さんは、著書『国家と教養』の中で「教養」とは、「直感力」と「大局観」を与える力であり、教養が果たす人生の多大な効果を指摘しています」。
「他大学にない、多様で深い教養を身につけ放送大学を卒業することに、誇りと自信を持って下さい」。
「東洋哲学の泰斗、安岡正篤先生は、学問し、教養を身に着ける意義を『荀子』の箴言から紹介しています」。
「夫(そ)れ学は、通の為に非ざるなり。窮して苦しまず、憂えて意(こころ)衰えず、禍福終始を知って惑わざるが為なり」。
「学問するのは、立身出世等のためではなく、どんな心配ごとがあってもへこたれず、何が禍いで何が幸福かを知り、人生の複雑な問題に直面しても、惑わないためである」。
「学問は知識を修得するだけでなく、人間を作ることであるとの教えです。学問をし、教養を身につけ人間を作る。重要に思います」。
最後に、生涯、学び続ける習慣の必要性に触れました。「幕末の儒学者、昌平黌の総長、佐藤一斎先生の著書に『言志四録』があります。これは、西郷隆盛先生の座右の書です」。
「その中に、「三学戒」という箴言があります。二度ない人生には、生涯学びの習慣を持つことが、必要であると言うのが核心です。私もそう思います」。
「少(わか)くにして学べば、壮にしてなすあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」。
「放送大学の学生の皆さんは、すでに学びの習慣を持っています。是非、それを継続して下さい。継続は力です」。
放送大学では、1年に2回、9月と3月に学位授与式があります。毎回、卒業生の皆さんに敬意を表し、学位授与式が開催できることを有り難く思います。卒業される皆さんから元気をもらっています。感謝です。
『苦悩は成長の条件』(安岡正篤 一日一言)
「人間は苦悩によって練られてゆくのでありまして、肉体的にも精神的にも人間が成長してゆくために苦悩は欠くことのできない条件であります」。
「そこで苦悩に敗れたらおしまいですから、過失や失敗のために取り乱さないように心がける必要がある」。
「自分の過失を知るということは、自己教育の最も重要な方法の一つであるとともに、人を教育する者の常に注意すべきことであります」。
「物心は相まって自己を完成する。人格も亦、境遇と相作用して進歩するものである。随(したが)って困難な境遇は常に人格の試練を意味し、又能く人格の価値を表明する」。
『苦悩は成長の条件』、心に響く箴言です。