2022-09-16

忠犬クニオとの散歩、『言志後録』を学ぶ

一昨日、忠犬クニオとの朝の松ヶ岡一周散歩コース、1時間。その途中にある「菅原兵治記念館」の「箴言の掲示板」。今月は、『言志後録』の箴言が紹介されていました。

「春風を以て人に接し、秋霜を以て自ら粛(つつし)む」、『言志後録33条』。「春風のなごやかさをもって人に応接し、秋霜のするどさをもって自らを規正する」。心に響く箴言です。

本日は、『言志四録』について少し紹介します。一部再掲です。

『言志後録』は、佐藤一斎先生が記された『言志四録』の一つ。これは、幕末、昌平黌の儒者、一斎先生が42歳から82歳までに記された四巻の箴言集。

『言志録、246条』、『言志後録、255条』、『言志晩録、292条』、『言志耋(てつ)録340条』より構成された1,133の箴言集。

前職の山形大で教育・国際交流担当の時には、月曜日の朝11時からの「教育・学生支援部 朝の会」で、『言志四録』から箴言を一つ紹介していました。『言志四録』、懐かしいです。

一斎先生、美濃の巌邑藩(いわむらはん)の藩士として1772年に誕生。1841年60歳の時、昌平黌の儒官(総長)になり、数千人の門人を育成。明治が始まる9年前、1859年に88歳で逝去。

有名な門人には、佐久間象山、横井小楠、安積艮斎、中村正直等。さらに、象山先生の門下からは、勝海舟、坂本龍馬、吉田松陰、小林虎三郎等の志士が輩出。

そして、松陰先生の門下からは、高杉晋作、久坂玄瑞、木戸孝允、伊藤博文、山県有朋等が輩出され明治維新を形成。

先生は、幕末から明治の日本形成に大きな影響を及ぼした人と言っても過言ではないでしょう。

また、西郷隆盛(南洲)が、この『言志四録』を愛誦し、その中から、会心の101条を抄録し、金科玉条として座右の箴(いましめ)としたとのこと。

『言志晩録60』は『三学戒』。「少(わかく)にして学べば、則ち壮にして為すことあり 壮にして学べば、則ち老いて衰えず 老いて学べば、則ち死して朽ちず」。

意味は、「少年の時学んでおけば、壮年になってそれが役に立ち、何事か為すことができる。壮年の時学んでおけば、老年になっても気力の衰えることがない」。

「老年になっても学んでいれば、見識も高くなり、より多く社会に貢献できるから死んでもその名の朽ちることはない」とのこと。

生き方の本質が、片言隻句(短い言葉)に凝縮。『言志四録』、味わい深い書です。明治・大正時代には、多くの日本人が学んだ書とのこと。一斎先生に感謝です。

今回のブログは、『言志四録(一)』(佐藤一斎著、川上正光全訳注、講談社学術文庫)を参考にしました。

『六然(りくぜん)』(安岡 正篤 一日一言)

「自處超然(じしょちょうぜん):人間は自分の問題となると、物にとらわれて執着したり、拘泥するものである。事に臨んで自分に関する問題から解脱し、抜け出せるように勉めることだ」。

「處人藹然(しょじんあいぜん):人に対しては好意に満ち、温かい気分を持って対するのである。藹は草木の青々とした雰囲気をあらわす文字である」。

「有事斬然(ざんぜん):何か問題があるとき、うろうろしたり、うじうじせず、活気に満ちきびきびしている」。

「無事澄然(ちょうぜん):何もない時は、氷のように澄み切っている」。

「得意澹然(たんぜん):得意の時は威張ったり驕ったりし易いものであるが、人間はその時あっさりしていることが肝腎である。まだまだ足りないという謙虚さを抱くことだ」。

「失意泰然(たいぜん):失意の時は、ばたばたせずにゆったりと落ち着いている」。 

『六然』は、勝海舟の座右の銘とのこと。生き方の本質が、片言隻句に凝縮された好きな箴言。心に留めたく思います。