2023-03-17

学会小集会、「昆虫生態学の牽引者から学ぶ」

3月中旬、大阪府枚方市の摂南大学で4年ぶりの対面での学会大会、日本応用動物昆虫学会大会が開催されました。本日は、その大会で企画した小集会について少し記します。

この大会では、2011年から2018年まで5回、『温故知新・昆虫生態学の先輩から学ぶ』との小集会を2名の友人と企画しました。

目的は、「長年、昆虫生態学を研究してこられた大先輩とその仲間及び教え子の研究者の皆さんが、昆虫生態学の研究者として如何に生きてこられたか、その生き方を学び、それを私たち後輩が、今後の研究に活かす」。

そして、この小集会の講演者を中心に10名の執筆者で『博士の愛したジミな昆虫』を2020年に岩波ジュニア新書として出版。

この続編の企画として『縁尋機妙・昆虫生態学の牽引者から学ぶ』を2019年から2021年まで3回企画。しかし、2019年に1回目を行った後、コロナで大会が中止。今年、4年ぶりで2回目を開催。

この小集会は、3つの目的があります。

「昆虫生態学の牽引者が、自身の研究や、研究の面白さ及び苦労話、今後の研究の方向性等、昆虫生態学を学ぶ後輩が役に立つと思われることを紹介」。

「さらに、「牽引者」の仲間の方が、「牽引者」の方との関わりや学び及び、自身の研究等を紹介」。

「「縁尋機妙」とは、「良い縁がさらに良い縁を尋ねて発展していく様は誠に妙なるものがある」と言うこと。この小集会が、参加者にとり「縁尋機妙」になることを期待」。

今回まずは、「牽引者」の教え子から『超えられない壁との向き合い方』との講演。研究生活を振り返ると師匠は「超えられない壁」ではなく「肥沃な畑」であった。

師匠のお陰で多くのポスドク等が、研究室を訪問して研究し、そのような研究者から多面的に学べた。師匠は、「肥沃な畑」を提供してくれたとのこと。

さらにもう一人の教え子は『昆研:カメフジツボ研究の起源』との演題。昆虫学研究室のテーマとしては珍しいウミガメの甲羅に付着するカメフジツボの研究等を紹介。

「牽引者」の指導教員から、「それは面白い」、「いいいんじゃない」との言葉に励まされた研究生活であったとのこと。

このような学生さんを前向きにする言葉、鼓舞する言葉、重要と感じます。しかし、これができる大学教員は、多くないように思います。学生を成長させる言葉、必要です。

小集会の主講演者である「牽引者」は、『逆輸入研究者の道―論文業績主義の功罪』との演題。これまでの研究生活を振り返り3つの教訓等を紹介。

「教訓1:世界には理解者がいる。教訓2:弟子は外で褒めるな。教訓3:論文を書くだけでは伝わらない」。

「牽引者」の研究初期、日本人研究者からは、自身の研究評価は低かったが、外国人研究者が研究を高く評価すると日本人研究者も研究を高く評価するようになった、『逆輸入研究者の道』。

私は大学院博士課程2年の時、3年間の研究結果をA4用紙一枚に記し、初めて書いた日本語の論文(図表は英語)別刷を同封して国内20人、海外20人の著名な研究者に郵送したことがあります。

日本人研究者の全てから全く返信はありませんでした。しかし、海外の著名な研究者の全てから自然科学の最も著名な学術誌、NatureやScienceの別刷と一緒に、私の論文が出版されたら是非別刷を送って欲しいとの手紙が届き、嬉しく思いました。

そんな昔のことをフト思い出した『逆輸入研究者の道』の講演。

「牽引者」の講演、久しぶりに多面的な学びと刺激をもらいました。

私は大学で28年間の教員生活。約100名の学生さんと卒業研究、修士及び博士研究と関わり、8名の学生さんの博士研究を指導。そして7名が今、大学教員として活躍。このような学生さんとの楽しい研究の日々が思い出された小集会の講演でもありました。

一方で、今回の発表者の講演を聴いて、「論文を書かなければ、研究をしたことにならない」の徹底、改めて重要に思いました。私の研究室では、これを徹底しなかったことを大いに反省しています。

小集会終了後は、講演者の方々を中心に久しぶりに夕食会。若い研究者と一緒に多面的な話題の情報及び意見交換の良さを再認識。

刺激と学びをもらった90分とその後の夕食会。演者の皆さんや共同企画者に感謝です。

『いまを大切に』(平澤 興 一日一言)

「今日一日の実行こそが人生のすべてです。それ以上のことはできない」。

『いまを大切に』、重要に思います。