2023-03-19

吉田兼好の『徒然草』を学ぶ

「徒然なるままに、日暮らし、硯(すずり)に向かひて、心にうつりゆく由(よし)無し事を、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ」で始まる『徒然草』。

2022年度2学期の受講科目『『方丈記』と『徒然草』』の『徒然草』を今、振り返っています。本日は、『徒然草』について少し記します。

第一段は、「いでや、この世に生まれては、願はしかるべき事こそ多かめれ。御門(みかど)の御位(おんくらい)は、いとも畏(かしこ)し」と起筆。

今回受講のテキスト、『『方丈記』と『徒然草』』の『徒然草』は、その本文をじっくり味わうより『徒然草』に関する多面的な紹介。

そこで、主任講師が推薦する中野孝次著『すらすら読める徒然草』を購入し、『徒然草』を少しずつ味わっています。

中野さんは、『徒然草』全体から、その約四分の一、合計60段を選び、それらを12項目のテーマ別に分類する。

それは、「1.世俗譚、2.しばらく楽しぶ、3.なんとなくいい話、4.生死、5.名人、6.シンプル・ライフ、7.一事に専念せよ、8.心のふしぎ」と並ぶ。

そして、「9.よき趣味、悪しき趣味、10.美とは何か、11. ありがたい話、12. 実践的教訓」と続く。

このような分類は、初学者にとり『徒然草』を読み易くする。

その一つ『10.美とは何か』に、『第212段、秋の月』が、紹介されている。「秋の月は、限りなくめでたきものなり。いつとても月はかくこそあれとて、思い分かざらん人は、無下に心うかるべきことなり」。

これは、「秋の月は、何にもまして限りなくいいものだ。それを、月とはいつもこうゆうものだと思いこんで、他の季節の月との区別もつかぬような人は、もう話にも何にもなるものでない」とのこと。

「中秋の名月」、秋の月の美しさは、際立っているように思います。『美とは何か』、考えさせられます。

主任講師が『すらすら読める徒然草』を解説する。しかし、これは解説と言う名の書評。

講義では、ご自分が記された教科書をもとに授業を展開され、ご自分の考えや生き方を感じるところが少ない。しかし、この「書評」では、主任講師の考えなどが記され、味わい深く貴重な学びとなっている。

その講師は、まず、「『徒然草』の大きな特徴は、ゆるやかな繋がりを前後に保ちつつ、いつのまにか意外な展開になっているところにある」という。

そして、「例えば、『徒然草』には、しばしばユーモラスな話が出てくるが、その前後に注目すると、多くの場合に、人生を深く見つめ、無常の世をいかに生きるかという、真摯な問いかけの段が位置するという法則が見いだせる」と指摘する。

さらに、「本書は、中野の「我流」にも関わらず、ページを繰る手ももどかしいくらい、先へ先へと読ませる力を持っている。なぜ、それが可能だったのだろうか」。

それは、「本書には、古典への愛情に裏打ちされた自然な心の流露と、その思いを読者に伝えるべく施された、最新の工夫があるからである。その隠された工夫を、中野は「我流」という一言に込めた」と述べる。

『すらすら読める徒然草』、これからじっくり味読したいと思います。古典からの学び、趣があり良いです。中野さんと主任講師に感謝。

『人生は心がけと努力』(安岡正篤:一日一言)

「人間はできるだけ早くから、良き師、良き友を持ち、良き書を読み、ひそかに自ら省み、自ら修めることである。人生は心がけと努力次第である」。

『人生は心がけと努力次第である』、心に留めたい箴言です。