2020-11-25

「生物群集を考える」

「群集理解にとって不可欠な基礎概念を研究史とともに詳述」。

「ネットワーク、相互作用、生態系の複雑性と安定性の関係等、群集の構造とその機能に不可欠な概念をその歴史とともに学ぶ」との帯の書籍が、数ヶ月前に届きました。

この書籍は、京都大学学術出版会「シリーズ群集生態学 第1巻 生物群集を理解する」です。

このシリーズ、「第2巻 生物進化からせまる」、「第3巻 生物間ネットワークを紐とく」、「第4巻 生態系と群集をむすぶ」、「第5巻 メタ群集と空間スケール」、「第6巻 新たな保全と管理を考える」があります。

一般的に学術書の原稿は、複数の専門家が査読し、査読者の意見等を参考に書き換え、その後、出版されます。

京大出版会から、上述の本が届き、10年以上前、「生物群集を理解する」、「第2章 競争と平衡の群集論の展開」の原稿査読を思い出しました。第2巻から6巻までは、約10年前に刊行され、第1巻だけが未刊。

第1巻が贈られ、「シリーズ群集生態学」を懐かしみ、やっと刊行された第1巻、感慨深く思いました。私も「第6巻 新たな保全と管理を考える」の「害虫管理の新展開:群集生態学の視点から」を執筆。

山形大学28年の在職中、後半の12年間は、農学部長や理事・副学長として管理や運営業務が主で、専門の研究から疎遠。それゆえ、久しぶりに新刊専門書を読み、昔を色々と思い出しました。

今から30年前、私も含めた3名、日本生態学会で自由集会「生物群集を考える」を企画し、多くの若手研究者と生物群集の研究を多面的に楽しく学びました。

この自由集会は、1990年から2002年まで、10回開催。講演者からの原稿を中心に年1回、「生物群集を考える ニュースレター」も発行しました。

これは、「あるテーマに関する総説原稿(Opinion paper)」と、それに対する「コメント」より構成され、「あるテーマ」をより深く多面的に理解する試み。手前味噌ですが、とても好評な「レター」でした。

さらに、第10回目の自由集会終了時には、京大出版会から「群集生態学の現在」を刊行。これは当時、活発に研究している研究者に執筆を依頼し、出版しました。

群集生態学に関する書籍がなかった当時、これは貴重な専門書。多くの生態学研究者に読まれました。

最後の自由集会は、会場が大入り満員。その後の懇親会には、約60名の研究者が集まり、楽しく熱く研究討論しました。懐かしい思い出です。

この企画を通じ、地方大学での研究活動の維持には、全国学会で自由集会等を企画し、多面的に学ぶことの必要性を感じました。

そして、これらの企画から知り合いが増え、これは研究上の貴重な財産になりました。人と人との出会い、重要に思います。多面的な挑戦、必要に感じます。

情報技術が発達しても、研究者が直接議論する場と懇親する機会は必要に思います。

京大出版会から贈られてきた「生物群集を理解する」を読み、研究者時代の昔を懐かしく思い出しました。

『無駄を恐れるな』(平澤 興 一日一言)

「機械の中の一つのボタンや歯車のような存在だけでは、人間とは申されますまい」。

「どんな学問をやるにしても、次の発展への可能性があり、複雑な環境の中にあっても人間的な味を失わず生きて行くようになるためには、学生時代は骨惜しみをしてはなりませぬ」。

「必要最小限度の勉強で要領よくやるというようなことでは、仮に優秀な頭脳を持っておっても決して人生に大なる貢献はできませぬ」。

「まじめに生きることによって生ずる無駄や失敗を恐れてはなりませぬ。ある意味では無駄のない人生は浅い人生です」。

研究生活を含めた人生を今振り返ると、多くの無駄や失敗がありました。これは、短期な視点からは無駄や失敗でも、長い人生では、その経験が役立ったことが多々あります。「無駄を恐れるな」、同感です。