2020-11-23

明治、大正、昭和の小学校教育、「修身」

「ワシントンは、にわへあそびに出て、父のだいじにしていた、さくらの木を切りたおしました。「これはだれが切った」と父にたずねられた時、「私が切りました」と、かくさずに答えてわびました」。

「父はワシントンのしょうじきなことをよろこびました。これはワシントンの六さいの時のことでありました」。

これは、明治43年の尋常小学校修身教科書に掲載されていた、1年生向けの読本の中にある「しょうじき」の記述です。

最終学歴、尋常小学校卒の祖父母が、父や母をどのように育て、人としての生き方を示したのか考えたことがあります。

母は生前、「自分の子供のころ、祖母から厳しく日々の生活を躾られ、それが今に通じている」と話していました。農業を生業(なりわい)としていた祖父母は、そのような躾、生き方の基本をどこで学んだのだろう。

八木秀次監修「親子で読みたい精撰尋常小学修身書」が、2002年出版。今から18年前。この本を読み、祖父母による母への躾は、祖父母が尋常小学校で習った「修身」だと思いました。


上述の「ワシントンは、・・・」の話は、「修身書」の「素直な心を持つ(正直・誠実・良心)」に記されています。

修身の教科書というと堅苦しいとの先入観があります。しかし、明治・大正・昭和の尋常小学校修身教科書は、とても分かり易く人としての徳目が記された、具体的な人物の言動の紹介です。

これは良い本だと思い2010年に我が家では、7冊購入し、幼稚園から高校生まで5人の子供を含む親子で、夕食後30分、家族で輪読。親子ともに楽しく学習。今では、懐かしい、一家団欒のひと時でした。

徳目としては、1.素直な心を持つ(正直・誠実・良心)、2.自分を慎む(謙遜・質素・倹約・寛容・報恩)、3.礼儀正しくする、4.自分の行いを律する(自己規律)、5.夢を持つ(志を立てる)、6.一生懸命働く(勤勉・努力)。

そして、7.つらさを乗り越える(忍耐・辛抱・克己)、8.困難に立ち向かう(勇気)、9.やるべきことを成し遂げる(責任)、10.合理的精神を持つ、11.ルールを守る、12.家族を尊ぶ(夫婦・親子・兄弟・祖先)。

さらに、13.友達を大切にする(友情)、14.思いやりの心を持つ(同情・博愛)、15.力を合わせて(協力)、16.みんなのために(公益)、17.日本人として、18.美しく生きる、が記されています。

八木秀次氏の「監修者解説」によると、「1981年米国のレーガンは、大統領に就任早々、教育改革に着手。教育長官のベネットは、1993年に「道徳読本(The Book of Virtue)」を刊行し、これは、832頁の大部ながら、1994年から1995年に250万部の大ベストセラーとなる」。

「そして、現在、「道徳読本」は、米国の第二の『聖書』になりつつある。内容は、「自己規律」、「思いやり」、「責任」、「友情」、「仕事・勉強」、「勇気」、「忍耐」、「正直」、「忠誠」、「信仰」の10の徳目で構成されている」。

「レーガンは、「日本の教育に学べ」と日本に教育視察団を派遣して、日本の教育を学んだ。ベネットの「道徳読本」の着想も、戦前の「修身」の教科書を想定していると推測される」。

「修身斉家治国平天下(しゅうしんせいかちこくへいてんか)」。天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、家庭をととのえ、国家を治め、そして天下を平和にすべきである。

「修身」、今までも、今も、これからも、重要に思います。

写真は、雪を抱いた秋の鳥海山と月山の一葉。よい眺めです。


『習慣形成』(平澤 興 一日一言)

「子供の習慣形成にとって最も大切なことは、ただ上からがみがみ言うことではなく、親たちも皆努力をして、家庭の中に良い雰囲気をつくることである」。

「例えば、食前食後の感謝や朝晩の挨拶、履き物の脱ぎ方や長幼の序等にしても、また我慢強さとか、不平や愚痴や悪口を言わぬこと等、家庭の日常生活のそうゆう雰囲気が重要である」。

「それがあれば、やかましく言わなくとも、長い間には自然に子供たちにもそうした気風が移り、そういう態度を身につけるようになる」。

「大事なのは説教ではなく、親たちの日々の生活における心構えと実践である」。

「家庭の中に良い雰囲気をつくる」、「親たちの日々の生活における心構えと実践である」、全く同感。反省です。「修身斉家治国平天下」。