2024-08-26

2024年度山形SC、第3回「学びのサロン」

本日は、先日行った第3回目、私の「学びのサロン」を少し紹介します。

今年度、私の「サロン」は、岩波ジュニア新書『野生動物と共存できるか:保全生態学入門(2006)』(高槻成紀著)の輪読です。

今回は、「3章 保全生態学が野生動物をまもる」。第3章は、4つの見出しで構成される。

まずは、『1.保全生態学への動き』。「保全生物学」は、野生動植物の減少を救う学問。保全生物学の中でも特に生態学に関する研究分野が「保全生態学」。

『2.生態学の考え方』。生態学は、生物と環境との関係を解明する点が一つの特徴。もう一つの特徴は、生態学が生物の現象のうち、個体以上の現象を研究対象とする点。

生態学は個体が周囲とどのような関係を持っているのかを調べる学問。例えば、ノウサギは、植物の量や質で数が増え、キツネやイヌワシなどの捕食者により数が減少。

生態学の説明に懐かしさを感じる。生態学は、同一種の生物の個体数変動等を明らかにする個体群生態学や、生物群集の調和の有無とその機構等を扱う群集生態学がある。さらに行動生態学や進化生態学等々、色々な分野を含んでいる。

『3.保全生態学の考え方』。ここでは、生態学の学術用語が紹介される。

まずは、1)キーストーン種。ある生態系の「礎」となるような重要な生物。例えば、金華山の生態系全体はシカにより大きな影響を受けている。このような生物のことをキーストーン種という。

次は、2)アンブレラ種。これは、傘のような生物。例えば、コウノトリを守ることにより、その傘の下に暮らす無数の小動物や植物が守られる。アンブレラ種とは、コウノトリのような生物をいう。

そして、3)フラッグシップ種。旗のように目立つ性質を持つ生物。例えば、パンダ。パンダは、人間に人気がある。

さらに、4)コリドー(回廊)。細長い廊下のような生息地。例えば、細長い森林等。

伐採は林縁をつくるが、同時に森林が孤立する問題を生む。小さな森林がポツンポツンとしか残っていない時、これを野生動物保護のためにいい形にできないか考えると、その小さな森林を繋ぐ考えが生じた。

大面積の森林を回復させるのは難しいが、狭い面積なら回復可能かもしれない。そして、そこをつたって動物が移動可能。これがコリドーの考え。

昔学んだ、生息地の分断化と棲息可能な種数の問題を思い出す。

最後は、『4.生物のつながり』。生物の保全には、その種とつながりあう他の生物との関係を理解することが重要。

まずは、1)ヘラオオジカ、オオカミ、森林。ヘラオオジカは広葉樹を好んで食し、オオカミに食される。それゆえ、オオカミが多い処では、ヘラジカが少なく植物は多くなる。

次に、2)サケ。サケは海で過ごし成魚となり川に戻る。海で生活したサケが川に上ることは、海の成分が川に運ばれること。そして、そのサケをクマやワシが食することで海の成分が山に蓄積。

保全の対象とする生物のみを守るのでは不十分で不適切な場合もある。生物のつながりやバランスを守ることが大切。

この「生物のつながりやバランスを守ることが大切」の一言は、重要に思う。

今年度は、私を含め8名の参加者のゼミ。第3回も全員出席で、1名は埼玉県からの学生さん。第3章の紹介後、多面的な意見交換。学生さんから『日本の森にオオカミを放せ』との本を紹介される。

ヨーロッパでは、オオカミを放し、自然の調和が保たれるようになったとか。とても興味深い話。私も読んでみようと思う。

また、金華山島では、シカやサルが大発生し、植物を食い尽くす被害が出ているとのこと。このような島でシカ等の捕食者のオオカミを放して、食う物と食われる物の数の変動を見るのも興味を感じる。

あっと言う間の90分、参加者の意見から色々と学ぶ。感謝です。

『陶冶(とうや)する』(安岡正篤 一日一言)

「最高の教育を受けた人間も、その後の自己陶冶を缺(か)いては、立派な人間には成り得ない。ごく劣悪な教育も、自己陶冶によっては、なお改善され得るものである。いかにも人間は陶冶次第です」。

「「陶」というのは、焼き物を造る、「冶」というのは、冶金の冶で、金属を精錬することであります」。

土を粘(ね)り、焼いて、陶器を造る。鉄を鍛えて鉄器を造るようなもので、人間もやはり、焼きを入れ、鍛えるということをやらなければ、ものになりません。いくつになってもそうであります」。

『陶冶する』、「いくつになっても焼きを入れ、鍛える」、肝に銘じます。