2024-05-08

米処の庄内、田んぼの季節が始まる

朝の忠犬クニオとの散歩。庄内の田んぼが耕起され、水が入り、いよいよ田んぼの季節が始まります。



2012年から7年間、我が家の近くの田んぼを借りて行った野外実験を思い出しました。本日は、一部再掲も含め、その思い出等を少し紹介します。

この自然共生水田の研究は、私の友人が2006年 鶴岡市で「全国トンボサミット」を開催したのがきっかけ。その時の講演者、篤農家の方との貴重な出会いが研究の出発点。

この方は、酒田市で30年以上「無肥料・無農薬・無除草剤」でコメ作り。「コメ作りには、雑草や害虫も含めた生き物の多様性と調和が重要で、生き物と生き物のつながりが必要だ」と話される。

篤農家であり生態学者に思います。探究心が旺盛でお会いすると何時も多くの学びがあります。凄い人。

その方の田んぼを視察しましたが、ヤゴやタニシも含め多様な水辺の生き物が生息。「多様な生き物の役割や自然の調和機構の解明」がライフワークの私には、大変魅力的な研究対象。一気にのめり込みました。

早速、学生諸君や友人と共同研究を開始。研究は3段階で進行。まず、1)自然共生水田と慣行水田の水田生態系の相違を解明(2009-2011)。

そして、2)自然共生水田の経過年数が湛水及びイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (2012 – 2014)。

最後が、3)タニシが湛水生物及びイネの生育とイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (2013 - 2015)。

これらの研究は、8名の学生諸君との共同研究で、4編の修士論文と4編の博士論文となりました。

3番目、タニシの影響の研究が、我が家の近くの水田を借用しての実験。3年間の実験の前後を含めて7年間、三筆、三反歩の自然共生水田との付き合い。

田植えと稲刈り以外の田んぼの除草、畦の草刈り、朝夕の水管理等、田んぼの管理も実施。色々な発見があり興味深い7年間。田んぼを楽しみ田んぼから多面的に学ぶ。

農薬等を使う「慣行水田」を無肥料・無農薬・無除草剤の「自然共生水田」に変えると、昆虫やクモ、オタマジャクシ、ハラアカイモリ、シマヘビ、ツバメ、サギ等、生き物の種数が増え、生物多様性が増加。

「慣行水田」では、肥料や農薬等の化学資材の投入で、特定の生物の個体数が増加し、水田の多様性は減少。

一方、「自然共生水田」では、湛水及び地上の生物多様性が増加し、それが生物の調和を保つ機構の一つのようでした。今後は、その調和維持機構の解明が宿題。

「自然共生田んぼ」では、除草剤を使わないので、6月から7月、毎週1回合計8回除草機での除草が必要。暑い日中の除草で熱射病に罹ったことも、今では懐かしい思い出。

ある朝、田んぼの水が全くないのを発見。原因を探求。排水口にネズミ等が掘った大きな穴を発見し、驚く。その穴から水が流出。色々と予期せぬ事が起こります。

田んぼの畦は100mあり、その草刈りが大変だったこと、田んぼの多様な生き物観察の面白さ等々、懐かしく思い出します。

色々と学び考え楽しんだ7年間。学生諸君や共同研究者の皆さんに感謝。

『学べば学ぶほど』(平澤 興 一日一言)

「世の中には、説明のできないような不思議がたくさんあります。全てが科学で解明できるなどということは、間の抜けた科学者の言うことであります」。

「真に科学を、学問を研究した人は、分からないことがだんだん増えてくるということをしみじみ思うものです。学問をして賢くなると思うような学問の仕方は、本当の学問の仕方ではありません」。

「学問をすればするほど、一つ分かれば、十位分からんのが出てきますから、他の人よりは深く知っても、自分として主観的には分からんことの方が、だんだん増えてくるのであります」。

「学問をすればするほど、世の中に当たり前なんてことはなくなり、全てが不思議になるのであります」。

確かに研究すればするほど、分からないところも増えてきます。『学べば学ぶほど』、同感です。