2024-05-16

巻頭言、「君子は諸を己に求む」と數土さん

「君子は諸(これ)を己に求む。小人は諸を人に求む」。これは、數土さんが、『致知5月号』、「巻頭の言葉」で紹介する「『論語』衛霊公第十五」の教え。

「巻頭の言葉」は、まず、「日本のGDPがドイツに抜かれ、世界第4位に陥落。日本は1968年に西ドイツを抜き米国に次いで世界第2位に躍進。2010年に中国に抜かれるまでこの地位を長く保持していた」ことを紹介する。

そして、「日本は漠然と「失われた10年」、さらには「20年、30年」と繰り返すのみで、国政レベルの十分な解析、効果的な対策の立案、実践が不十分だった。国会等で論戦がなく結果的に無策だった」と批判する。

また、「マスメディア・政治評論家・学者が取り上げているのは政党派閥の裏金問題。特に見苦しいのは、当該政治家の説明能力の幼稚さ、責任感や倫理観の欠如。このような政治家には即刻退場を願う」と述べ、

「ここで省みることは、彼らを選ぶ権限は、我々にあったこと。責任は当該政治家だけにあるのではなく、根本的には今、彼らを糾弾している我々にこそある」と指摘する。

そして、孔子は弟子に「君子は諸を己に求む。小人は諸を人に求む」を紹介し、

「上に立つ立派な人物は、周りに起きた諸々の過誤や失敗に対して謙虚に反省し、自ら責任を取る。しかし、未熟で卑怯な者は、自らの過誤や失敗をも他人のせいにし反省しない。小人(卑怯者)になるな」と教える。

一方で、「2023年に輸出、ガバナンス、文化、人材、観光、移住と投資の6つの分野でそれぞれの国家の評判・評価を指数化し、ランク付けした「国家ブランド指数」で日本は、ドイツを抜きトップに立った」と紹介。

「孔子はまた、「信無くんば立たず」とも説いている。国の内外に共通して理解されている言葉であり、標題にも重なる大切な教えとして、心に刻んでおきたいものです」と述べ、「巻頭の言葉」は、終わる。

數土さんの「巻頭の言葉」は、毎回、聖賢の書を紹介し、それと時事の要点を関連させて今の問題点を分かり易く述べる。現代を生きる羅針盤のような「教え」で、学ぶのが楽しみである。

これまでもブログで「數土語録」を紹介した。その一部を再掲する。

「簡単明瞭だけでは不十分。読み手に対し訴える力がなければ意味がない。そのためには自分自身の言葉で語り、自分の実際の体験や実績に基づいて書くしかない。さらに、リーダーなら夢も語る必要がある」。

「必ずしも数多くの修羅場を経験できないので「疑似体験」として「十八史略や史記等の書を読み歴史を学ぶ」ことは重要である」。

數土さんは、資本金約1,500億、従業員約65,000人のJFEホールディングス元社長で現名誉顧問。社長を退任後は、73歳から3年間、震災後の東京電力会長として東京電力改革を断行。

数多くの修羅場を経験され「学び」の重要性を体得された「教え」は心に響きます。數土さんに感謝です。

『三学戒』(安岡正篤 一日一言)

「少(わかく)にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず(佐藤一斎 言志晩録)」。

「若い者の怠けて勉学せぬ者を見る程不快なものはない。ろくな者にならぬことは言うまでもないが、まあまあよほどのろくでなしでもなければ、それ相応の志くらいはあるものである」。

「壮年になると、もう学ばぬ、学ぼうとせぬ者が随分多い。生活に逐(お)われてだんだん志まで失ってしまうのである。そうすると案外老衰が早く来る。いわゆる若朽である」。

「よく学ぶ者は老来ますます妙である。ただし学は心性の学を肝腎とする。雑学では駄目である」。

「細井平洲も敬重した川越在の郷長老、奥貫友山の歌に「道を聞く夕に死すとも可なりとの言葉にすがる老いの日暮し」と」。

『三学戒』、学びの習慣、必要に思います。『三学戒』、肝に銘じたい教えです。