「山椒は小粒でピリリと辛い」。娘が「山椒」の苗を購入し、私が苗を我が農園に移植。移植後3年経過した今、「山椒」の実がなり、「山椒は小粒でピリリと辛い」の実がなったことを家族に報告。
報告後、「山椒」は、実を食するためでなく、アゲハチョウを飼育するためだと分かりました。「山椒」の葉で飼育したアゲハの幼虫が今、蛹になり羽化しています。本日は、昆虫の飼育について少し紹介します。
今から32年前、理化学研究所で基礎科学特別研究員として研究に従事しました。その時の研究対象が、捕食性オオカと蚊の幼虫群集。オオカ幼虫は、他の蚊の幼虫を捕食し、成虫は花粉が餌です。
このオオカは、「幻のオオカ」と言われ、野外で発見するのは極めて難しい昆虫。
試行錯誤の結果、「三宅島の南の御蔵島で1978年頃にオオカが発見され、そこにはいるかもしれない」と聞いた話を思い出し、藁をも掴む思いで御蔵島に向かいました。
東京から飛行機で一時間南下すると三宅島です。三宅島の向いにあるお椀を伏せたような形をした周囲17キロの小さな島が御蔵島。
御蔵島では、かつてオオカが発見された場所を中心に、林や竹の切り株の水たまりをくまなく探しました。しかし、オオカには出会えません。翌日は全島調査をしましたが、見つかりませんでした。
オオカは古タイヤを設置するとタイヤの中に産卵することを思い出し、自動車修理工場からタイヤを譲り受け、7個のタイヤを竹薮に設置。
2ヶ月後の9月に二度目の御蔵島訪問。幸運にも4匹のオオカ幼虫をタイヤの中から採集。この幼虫から室内で飼育できるシステムを確立する必要があります。
まずは、成虫にして交尾をさせて採卵。交尾には雄雌が必要です。初めて採集したオオカは雄が3匹、雌が1匹。室内のケージに入れても交尾しないので人工交尾。
このためオオカの雌を麻酔して、雄の腹部に雌の腹部を接触し、交尾させます。交尾後、水の入ったフィルム容器に雌を入れフタをすると産卵。
このように記すと誰でも簡単に採卵できそうですが、そうではありません。人工交尾するためには雌雄のほぼ同時羽化が必須。これにはある程度の数のオオカ幼虫が必要です。
そして、次が人工交尾。これも簡単ではありません。最初に採集した4匹の幼虫は、羽化がそろわず人工交尾はできませんでした。
10月の三度目の御蔵島訪問では、8匹の幼虫を採集。この幼虫集団は、羽化がそろい、人工交尾をさせ、採卵。しかし、交尾が不十分で卵が未孵化。
11月に四度目の訪問で採集した個体から室内飼育が可能となりました。オオカは、長径が2ミリのラグビーボールの形をした白い卵を産みます。
産卵後3日すると白い卵が薄い灰色になり、その卵から体長1ミリの透き通ったヒラメのような幼虫が出現。幼虫が出現したときの感動を、今でも鮮明に覚えています。
オオカの飼育には、他にも必要なことがあります。オオカ幼虫は他の蚊の幼虫が餌で、その餌の蚊が必要です。
餌の蚊は、吸血性で、吸血源も必要。そのためハツカネズミを飼育し、それを吸血源に餌の蚊を飼育し、オオカの飼育が始まります。
御蔵島の竹藪に設置した古タイヤでオオカを発見した時の嬉しさや、苦労して産卵させ、その卵からオオカ幼虫が出現したときの感動は今でも鮮明に覚えています。
「山椒は小粒でピリリと辛い」のアゲハの飼育から、「昆虫飼育の楽しさと難しさ」を懐かしく思い出しました。
『最高の生き方』(平澤 興 一日一言)
「今が楽しい。今がありがたい。今が喜びである。それが習慣となり、天性となるような生き方こそが最高です」。
『最高の生き方』、単純な教えですが、心に残る教えです。『最高の生き方』、心がけたいです。