2024-09-05

米処の庄内今、実るほど頭を垂れる稲穂かな

米どころ庄内平野の水田では今、稲穂が頭(こうべ)を垂(た)れ、これから稲刈り。黄金の稲穂、良いですね。瑞穂の国です。本日は、一部再掲も含め、かつての田んぼでの研究等の一部を紹介します。

庄内では、武士の末裔の集落として有名な松ヶ岡に移住して18年が経過。我が家の裏の果樹園と畑で趣味の農業を楽しんでいますが、研究として長年関わったのは、田んぼ。

「頭を垂れる稲穂」を見て、約18年前から10年以上行った「無肥料・無農薬・無除草剤」でおコメを作る自然共生水田での米作りを思い出す。

我が家から徒歩5分の田んぼを借用し、7年間「無肥料・無農薬・無除草剤」でイネを栽培し、水田の多様な生物の役割を解明する研究を実施。

この自然共生水田の研究は、私の友人が2006年 鶴岡市で「全国トンボサミット」を開催したのがきっかけ。その時の講演者、篤農家の方との貴重な出会いが研究の出発点。

この方は、酒田市で30年以上「無肥料・無農薬・無除草剤」でコメ作り。「コメ作りには、雑草や害虫も含めた生き物の多様性と調和が重要で、生き物と生き物のつながりが必要だ」と話される。

篤農家であり生態学者。探究心が旺盛でお会いすると何時も多くの学びがある凄い人。

その方の田んぼを視察しましたが、ヤゴやタニシも含め多様な水辺の生き物が生息。「多様な生き物の役割や自然の調和機構の解明」がライフワークの私には、大変魅力的な研究対象で、一気にのめり込みました。

早速、学生諸君や友人と共同研究を開始。その研究は3段階で進む。

まず、1)自然共生農法と慣行農法が水田生態系に与える影響の解明(2009-2011)

そして、2)自然共生農法の経過年数が湛水及びイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (20122014)

最後が、3)タニシが湛水生物やイネの生育とイネの生物群集に及ぼす影響の解明 (2013-2015)

タニシは、「田の主(ぬし)」とも言われ、タニシが田んぼに多いとコメが増収したとのこと。

それゆえ、タニシが田んぼのヤゴ等の湛水生物に及ぼす影響やそれとコメ増収との関係を調査。


3番目の研究が、我が家の近くの水田を借用しての実験。3年間の実験の前後を含めて7年間、一反歩の田んぼを3つ使っての調査。

これらの研究は、8名の学生諸君との共同研究で、4編の修士論文と4編の博士論文となる。

田植えと稲刈り以外の田んぼの仕事、除草、畦の草刈り、朝夕の用水の操作等、田んぼの管理も行う。色々な発見があり興味深い7年間。田んぼを楽しみ田んぼから多面的に学ぶ。

農薬等を使う「慣行水田」を無肥料・無農薬・無除草剤の「自然共生水田」に変えると、昆虫やクモ、オタマジャクシ、ハラアカイモリ、シマヘビ、ツバメ、サギ等、生き物の種数が増え、生物多様性が増加。

「慣行水田」では、肥料や農薬等の化学資材の投入で、特定の生物の個体数が増加し、水田の多様性は減少。

一方、「自然共生水田」では、湛水及び地上の生物多様性が増加し、それが生物の調和を保つ機構の一つのよう。また、タニシは、湛水生物の多様性増加やそれを通じたお米の増収に機能。

「自然共生田んぼ」では、除草剤を使わないので、6月から7月、毎週1回合計8回除草機で除草

また、100mの畦が5本あり、その草刈りが大変だったこと、田んぼの多様な生き物観察の面白さ等々、懐かしく思い出す。

色々と学び考え楽しんだ7年間。学生諸君や共同研究者の皆さんに感謝。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を見て、かつての田んぼの研究を思い出す。懐かしい。

『学べば学ぶほど』(平澤 興 一日一言)

「世の中には、説明のできないような不思議がたくさんあります。全てが科学で解明できるなどということは、間の抜けた科学者の言うことであります」。

「真に科学を、学問を研究した人は、分からないことがだんだん増えてくるということをしみじみ思うものです。学問をして賢くなると思うような学問の仕方は、本当の学問の仕方ではありません」。

「学問をすればするほど、一つ分かれば、十位分からんのが出てきますから、他の人よりは深く知っても、自分として主観的には分からんことの方が、だんだん増えてくるのであります」。

「学問をすればするほど、世の中に当たり前なんてことはなくなり、全てが不思議になるのであります」。

確かに研究すればするほど、分からないことも増えます。『学べば学ぶほど』、同感。